闇に潜みしは誰ぞ |
---|
作家 | 西村寿行 |
---|---|
出版日 | 1978年11月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2024/08/22 00:30登録) シティポップがこんだけグローバルに再評価されるんだから、ハードロマンにだってチャンスは無いものだろうか、なんて思わなくもないですが、だからと言って例えば竹内まりやさん往年のLPを掛けながらカンパリ・オレンジ片手に本作を読むなんて趣味の悪い真似はとても薦められたもんじゃありません。 「わたし、ほんとうは、あなたがたのも、切りたい。もう男の汚ならしさには、へどが出そうだわ」 「おい、ナイフ、返せよ」 「心配しないで。仲間のは切らないから」 死んだバディと生きてるバディ。 死んだ二人は日本政府側の人間で、ある特殊な鉱物の在り処を探索していたらしい。 生きている二人は刑事。 時の弾みで、死んだ方の二人と接点が出来た彼らは、正体不明の敵から執拗な接触、攻撃を受ける。 勢いで警察を辞めた(!)二人はもう一つの新たな敵に出遭い、新しい女と出遭い、これぞ日本のハードロマンと言うべきギラギラした泥沼の冒険絵巻の中へと自ら将んで吸い込まれていく。 オープニングからしばらく続く、強い謎の押し寄せる感覚は圧倒的。 いったんネタがリリースされた後も、新しい謎が次々と攻め上がっては火の矢を放つ。 謎の傍らには常に凄まじいばかりの暴力と凌辱。 この両輪どちらも切らさず爆走し続けるのが素晴らしい、飽きさせない、読ませる、痺れさす。 スリルワラワラの終盤に近づき突如発生した謎の「泥棒」事件の機微とか、引っ張ってくれたねえ。 ラスボス臭パンパンの魅力溢れるアイツが(以下略) 「今度、遇ったら返せよ。いいな、アルコールだけは、借りたら返すもんだぜ。それが礼儀と言うもんだ」 題名の重さと、内容に潜む奇妙な軽さ。 そのくせ重過ぎるギラギラ拷問&陵辱シーンの頻発。 現代のコンプライアンスを散弾銃でぶっ飛ばすような会話や言説の遍在。 今これ新作で発表したら、AIの勝手な判断でスカーーーンと殺されちゃうんじゃないか作者が、と心配にもなります。 一方でかなり強靭なユーモアが作品の四方八方へ明るさを付与している点も特筆すべきでしょう。 こいつらいったい何回敵に捕まってあんな事こんな事されたら懲りるんだ、元刑事のくせして、なんてあきれてしまう滑稽味もあります(その裏からは強烈な惨酷描写が身を乗り出している構造なわけですが)。 「悪くはない。ペニスです」 重要ファクターとして「◯◯」が登場。 S.S.なんとか氏の某作にも登場するアレですが、ソレのアレとは重みが違う(洒落か)。 他にもあれこれ盛り込んで、最終的にはなかなかトンデミーな方向へと物語が飛んで行きそうになったけど、そこは流石にぐっと堪えたよね。。 あれ、そう言やあっち方面の落とし前は? と少し思ったけど、そっちには「◯◯」の存在は知られてないんだっけ。 どっかで漏れてるような気もするのだが・・・・ |
No.1 | 7点 | E-BANKER | |
(2010/06/06 14:27登録) 巨匠得意のバイオレンス&アクションですが、本作品は全体的に軽いタッチで、あまり重厚さはありません。 核兵器を製造する際に必要な幻の液体「重水」をめぐって、3つのグループが死闘を繰り広げます。 氏の作品には、”ものすごい特殊能力や訳の分からない××拳法の達人”という現実離れした人物がよく登場してきますが、本作品は普通の能力の登場人物ばかりで、そういう意味では安心?して読み進められます。 キャラとしては、大学の地質学講師「土田明子」の造形が見事・・・荒くれの山男たちの間にさらされ、まさに体を張った活躍をしてくれます(?) 男のロマンを感じたいときにお勧めの一作。 |