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ミステリの祭典

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どんでん返し

作家 笹沢左保
出版日1981年09月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 6点 斎藤警部
(2025/07/27 00:32登録)
100%会話文だけ .. それもほとんど二人間の .. で構成される物語六篇。 成功者、有名人、金持ちのいずれか(複数該当あり)が中心人物乃至キーマンとなる。
地の文で書く様な説明を、わざわざ会話文に押し込んでるような箇所も多いけど(この本に限らず普通にある事ですが)、それくらいは良いでしょう。
気品と教養ある文章ですが、スタスタ読めます。

影の訪問者
雨の降る深夜、元婚約者の女が、一見普通だが、よく見ると奇妙な恰好で訪れた。 外にはパトカーのサイレンが響く。 男女間で交わされる緻密な推理と××の応酬が熱い。 “奇妙な恰好” の理由が明かされると同時に暴露される真相。 真相の構造はシンプルだが、見せ方が巧く、熱い。   6点強

酒乱
二十年前の “酒の上の事件” と、そこに繋がった経緯、そこから現在に至る経緯を語り合う夫婦。 やがて或る告白が始まる。 この結末、私はハッピーエンドと見た。   6点


戦慄の状況下、決死の離婚を望む夫と、断じて承認しない妻。 夫は妻に心中を持ち掛ける。 焦げる様なサスペンスは申し分無いが、このエンドはちょっとカックンだなあ。   6点弱

父子(おやこ)の対話
若くして有名弁護士となった息子は、父の弟に育てられた。 幼い日、失火による火災で母と妹を失った事がきっかけだった。 今は共に暮らす父と息子とが、じっくりと対話する場を持つ。 ところが、息子が受け持っている事件の話がきっかけで、暴言飛び交う激しい口喧嘩に至り、そこから明かされる或る過去の秘密。 こりゃあ残酷だ。 二段底の告白には、連城スピリットが漂いました。   8点

演技者
人気女優は、若いボクサーの恋人に、夫を殺害させた。 自然なアリバイを狙い、近所のマンションに住む、いつも外を見ている画家らしき男を利用した。 躍動するストーリーは面白いが、あからさまなヒントそのまんまのオチと来たか。 しかも、悪い意味で微妙にオープンな結末。   5点強

皮肉紳士
孤独を愛する大学教授が殺害された。 容疑者は三人の養女。 手掛かりは、手書きの “奇妙なメッセージ”。 こ、これは、アンコール・ピースっすか? 唐突なサゲも猛烈にギャフンです! 本作だけは人間ドラマもまるで無えし。 でも面白かったよ。   5点

No.4 6点 メルカトル
(2016/03/02 21:54登録)
全体的に小粒な印象。異色な感は強いが、タイトル通りのどんでん返しを期待すると裏切られる。かなり緩めの切り返しといった感じで、エッジの効いた反転とはならなかったのは少々残念。
だが、それぞれがどことなく小粋な雰囲気を醸し出しており、会話だけで成り立っているとは思えないような、ストーリー性の豊かさを感じる。
個人的にベストは『皮肉紳士』で、ダイイングメッセージを学術的に幾種もの解釈を披露しており、興味深く読めた。

No.3 5点 まさむね
(2016/01/21 23:54登録)
 二者間の会話のみで構成される短編集。3名が発言する短編もありますが、いずれも、それぞれ「二者間」の会話で構成されています。
 軽快で読みやすいのですが、全短編に期待するレベルの反転があるのかと問われれば、ちょっと苦しいかな。まぁ、タイトルが「どんでん返し」っていう時点で、あれこれ想定しながら読んでしまいますし、ハードルも上がってしまうのでしょうが。

No.2 6点 E-BANKER
(2014/05/26 23:07登録)
1981年に発表された短篇集だが、なぜか最近書店で平積みにされていた本作。
全編会話だけで構成された異色の短編六つを集録。

①「影の訪問者」=夜中、突然やって来た元恋人の女。男は女が殺人を行った後にやって来たのだと推理したのだが・・・。ラストに主客入れ替わるところがミソ。
②「酒乱」=過去、人殺しという過ちを犯した女性。その女性を許し、夫婦として生活してきた夫。平和な生活を送っている今、過去の犯罪の真の姿が明らかになる。
③「霧」=またもや男と女の化かし合いがテーマの作品。ラストには皮肉な結果(?)が待ち受けている。よくあるパターンではあるが・・・
④「父子の対話」=②と同ベクトルのストーリーだが、本作では男女ではなく父子関係が背景。過去に起こった不幸な火災で妻(母親)を喪った夫と息子。その火災には隠された秘密があった・・・っていうパターン。でもなかなか衝撃的。
⑤「演技者」=これが一番ツイストの効いた作品。アリバイを演出しようとした女優が、ある皮肉な事実により罪に陥れられてしまう・・・。これはナカナカ。
⑥「皮肉紳士」=ダイニングメッセージをテーマとした一編。ある大学教授に事件解決の協力を依頼した警察。自宅から成田空港までの二時間で事件を解決できるのか、という趣向。ラストの一行にニヤッとさせられる。

以上6編。
タイトルどおり、全作品ともラストにドンデン返しが待ち受ける・・・というミステリー好きには堪らない趣向。
のはずなのだが、そこまでのインパクトのある作品はごく僅か。
全編会話だけで構成というのは、さすがに作者の腕前を感じさせるし、そこそこ読ませる作品には仕上がってる。

まぁ水準級という評価に落ち着く。
(個人的ベストは⑤で次点は④。あとは同レベル。)

No.1 5点 こう
(2009/10/31 22:17登録)
 全編二人の登場人物の会話のみで構成された異色短編集ということで読んでみました。全編殺人事件を扱い、全編どんでん返しがある作品集ですが肝心のどんでん返しがそれほどの切れ味がなく残念でした。井上夢人の「もつれっぱなし」もそうですが趣向はともかくストーリーを面白くするのは難しいようです。

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