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ミステリの祭典

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銀行狐

作家 池井戸潤
出版日2001年09月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 7点 麝香福郎
(2021/04/06 20:15登録)
銀行業務は高度化、洗練化されてきたが金の貸し借りを仲介する場という基本は変わらない。そこには欲望、誘惑や恨みといった人間の性が渦巻いている。
本書は内幕を暴露した実録物ではない。だが収められた五本の短編は読む者をカウンターの内側に迷い込んだ気分にさせるリアリティーを備えている。銀行での実務経験に裏打ちされた緻密な描写が強み。
破綻した銀行の支店金庫室で発見された死体の謎をめぐる「金庫室の死体」、顧客にサービスする粗品の中身を入れ替える現金詐欺トリックを描いた「現金その場限り」、狐を名乗る脅迫犯が銀行の危機管理の穴を突く表題作の「銀行狐」。どれも多彩な犯行手口と意外な展開が待っており、まずは良質のミステリといえる。

No.3 6点
(2013/04/05 10:39登録)
ミステリー界にお堅い銀行の世界を持ち込んだのはこの作家の功績です。

トップバッターの「金庫室の死体」は、のっけからかなり強烈。銀行が舞台というだけでミステリー的にはなかなかのものという感じがしました。ただ、後続の作品を読み進むうちに、しだいに経済小説に毛が生えた程度というふうにも思えてきました。
考えてみれば、横山秀夫の組織小説には慣れているし、経済小説も一時期よく読んでいたし、この程度の銀行短編を読んで新鮮味を感じないのは当然なのかもしれません。
まあでも、短編集としては、平均よりはやや上という印象です。

個別には、
「金庫室の死体」は、タイトルも内容もミステリー。ラストまでほどほどの読み応えあり。
「現金その場限り」のトリック(トリックというほどではないかも?)には感心した。
「口座相違」は、銀行内のちょっとした相違(ミス)から話がいろいろと発展してゆく。わくわくさせてくれた。
表題作は、長編でも成り立ちそうな内容で、長編にすれば物語性を出してラストを含めもっと面白くできたのかも、という印象。短編としては切れ味に欠けるかも。
「ローンカウンター」は連続殺人もの。真相解明への切り口がわざとらしい気もするが、作者が元銀行マンなので仕方なしか。刑事よりも銀行員が活躍するところもちょっとねぇ。それに、真相(犯人)自体に面白みがない。と、文句は多いがこの作品は印象深い。デビュー長編「果つる底なき」の主人公・伊木をさりげなく登場させているしね。

No.2 5点 haruka
(2013/02/13 21:04登録)
銀行特有の組織論や銀行員の悲哀など、後の”バブル組”シリーズにつながるエッセンスが感じられるが、まだ職人の域に達する前の作品、という印象。

No.1 7点 E-BANKER
(2010/01/11 23:26登録)
作者の処女短編集。
表題作のほか、「金庫室の死体」「現金その場限り」「口座相違」「ローンカウンター」の全5作。
本作は、氏得意の連作短編集ではなく普通の短編集ですが、どれもなかなかの”切り口”で、短編の醍醐味が味わえます。
中では「金庫室・・・」が一番面白いですかねぇ・・・
被害者の預金通帳一つでさまざまな推理が展開されるシーンは、「銀行ミステリー」の第一人者(他にいませんけど)たる作者の面目躍如といった感じですし、ラストのどんでん返しも効いています。
やっぱり、「人間の欲望」と「金」「事件」は切っても切れない関係なんでしょうね。

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