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ミステリの祭典

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スペードの女王
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1960年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点
(2024/09/29 19:19登録)
首のない死体モノ。

被害者の内股にはスペードのクイーンの刺青がある。そのため首がなくてもわかりやすいだろうとも考えられるが、もちろん犯人当てはそれほど容易ではない。被害者の対象者は二人いて、しかも彫物師は冒頭の時点で死亡している。さらに他の殺人事件も発生する。

登場人物が、短い長編のわりに多いのも、金田一や読者を手こずらせる要因となっている。

場面があまり変わらず、金田一が警部たちと推理していても、盛り上がりには欠けるように思う。
最後に場面が変わり一波乱があるが、こういった締めくくりは予想外だった。個人的にはきらいではないが、金田一モノとしてはいただけない。
とはいうものの、金田一モノとしては現代的(1960年作。元となった短編が1958年発表)な感もあって、新鮮さを感じた。その点では魅かれた。

おそらく短編の長編化において少し失敗したのだろう。だからストーリーがイマイチなのは仕方なしと、ちょっと贔屓目にみてギリギリ及第点というところだろうか。


およそ15年ぶりに、自宅にいちばん近い図書館に行ったところ、とってもきれいな角川の横溝文庫本を見つけて、驚いた。新しさにつられて借りてしまった。
今後、横溝の第n次ブームが来れば文庫か電子本の購入ということもあるだろうが、汚れも日焼けもない本を近くで手にとることができるかぎりは、未読の横溝は図書館で済ませたい。

No.2 5点 nukkam
(2016/10/30 02:57登録)
(ネタバレなしです) 1958年発表の短編を1960年に長編化した金田一耕助シリーズ第20作の本格派推理小説です。内股にスペードのクイーンの刺青のある女性の首無し死体が見つかりますが、同じ刺青を持つ女性が2人いるらしくどちらが殺されたのかがわからないため容疑者も容易に絞り込めません。物語の途中で「案外簡単に事件は解決した」とか「事件は急転直下、解決にむかった」といった文章が挿入されていますが被害者の素性が確定するのはほとんど終盤という難事件です。金田一の推理は犯人の特徴を推論するプロファイリングに近いのですがこれでは犯人特定には弱く、結局犯人の自滅を待っての事件解決です。動機は完全に後出しでしかも強引な解釈だし、そもそも金田一が捜査に参加するきっかけとなった彫物師の死の謎が事故なのか殺人なのか(多分後者らしいですが)はっきりと説明されないのも不満です。

No.1 5点
(2009/10/10 14:11登録)
刺青師の奇妙な体験から始まり、内股にスペードのクイーンの刺青をした女の首なし死体発見、さらに政財界にも影響力を持つ男の殺害、とストーリーは快調に進んでいきます。これは横溝正史の隠れた秀作か、と期待させられますが…
メインになる首なし死体パターンのヴァリエーションは決して悪くないのですが、残念なことに犯人の人物造形と動機が拍子抜けで、さらに最後の犯人逮捕に至る過程が変に通俗的になってしまっているのです。
1960年発表ですので、松本清張登場後の作品ということになります。しかし、横溝正史は大物殺害時点で「大きな社会的波紋にはしばらく目をつむり、殺人事件としてだけ、この問題にふれていこう」と書いていて、まさに反社会派というか非社会派というか。

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