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ミステリの祭典

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レディに捧げる殺人物語
別邦題『犯行以前』『断崖』『リナの肖像』

作家 フランシス・アイルズ
出版日1955年04月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 5点 蟷螂の斧
(2021/05/12 17:09登録)
裏表紙より~『リナ・アスガースは、八年近くも夫と暮らしてから、やっと自分が殺人者と結婚したことをさとった……ショッキングな書き出しで始まる本書は、妻を愛し、歓心を得ようとしながら、妻の心とはうらはらな言動をする異常性格の夫に献身的につくす健気な女の不可解な性と、その内心の葛藤を描いて新生面を切り開いた犯罪心理畢生の大作。』~

「エラリー・クイーンの黄金の20(長編10)」とのことで拝読。競馬の資金を妻から引き出そうとする男。それをなんだかんだ都合の良い方に考え許してしまう妻。その心理は到底理解不能。よって感情移入が出来ず、イライラが募るばかりの読書でした(苦笑)。ある読者の方が「愛しすぎ症候群」と評していたのが妙を得ているような。なんとも救いようのない二人の物語でした。

①1866 「ルルージュ事件」 エミール・ガボリオー 7点
②1868 「月長石」 ウィルキー・コリンズ 7点
③1878 「リーヴェンワース事件」 アンナ・キャザリン・グリーン 6点
④1887 「緋色の研究」 アーサー・コナン・ドイル 5点
⑤1913 「トレント最後の事件」 E・C・ベントリー 9点
⑥1920 「樽」 F・W・クロフツ 6点
⑦1925 「アクロイド殺し」 アガサ・クリスティー 10点
⑧1926 「ベンスン殺人事件」 S・S・ヴァン・ダイン 5点
⑨1930 「マルタの鷹」 ダシール・ハメット 7点
⑩1932 「レディに捧げる殺人物語」 フランシス・アイルズ 5点

No.2 9点 クリスティ再読
(2018/06/25 15:19登録)
これは素晴らしい。「殺意」を完全に上回っていると思う。アイルズ=バークリーのアイロニカルな視点が、本当に多義的なこの小説の深みを興趣深いものにしている。
ていうか本当はこういう作品をクリスティは書くべきだったんだよね。クリスティが書くべくして書けなかった内容を、アイルズは見事に補完したような印象を受けている。実際、1)女性主人公視点、2)夫はとてもクリスティ犯人らしいキャラ、3)田舎地主のカントリーライフ、とクリスティお得意設定がこれでもか、と盛られているのに意外にクリスティはこういう作品が書けなかったのが不思議である。遅ればせながらで晩年の「終わりなき夜に生まれつく」が本作のエコーなんだろう。
本作がイイのは、夫ジョニーが主人公に一切強制や暴力を振るうことがないことだ。モラハラにもならないくらいだ。それでも独特の「人たらし」な魅力によって(ちくしょう、ユーモアも抜群だ)主人公リナをいいように操り尽くす。何といっても、ズボラで怠惰な殺人者、というのがなかなかないキャラだ。バークリーのセンスが冴えてるよ。ヒロインのリナが「女教師」タイプで「悪童」な夫にコントロールしようとして実のところ心理的に依存するようになるプロセスを丁寧に描ききって、この独特な力関係から生まれる「自分が殺される事件の犯行前の従犯者」というアクロバットな関係を示してみせたのだ。

きっと私を殺すときには、目に涙を浮かべるだろう

そうサイコパスは奇妙に矛盾して、熱烈に愛していても、ささいな利益のために愛する者を殺す。そしてその死を本気で悲しむのだ。

で...だが、本作の映画化であるヒッチの「断崖」なんだけど、結末改悪という声が大きいのは言うまでもなし。実のところ評者本作を改めて読み直し、リナの「自意識過剰で自分の感情に溺れる」あたりにイラっとくるものがないわけでもないな。だからヒッチみたいなことをしたくなる気持ちもわからなくなんだよね。「断崖」のようなラストを決して小説が否定しているか、というと実はそうでもない。ここは一種のリドル・ストーリーとして読むのがより趣き深いと思うんだがいかがだろうか?

No.1 6点 ボナンザ
(2016/02/11 19:11登録)
屑男が頭の緩い妻を殺すまで・・・といえば簡単だが、その単純なストーリーをここまでの長編にしてなおかつ飽きさせないのは大変なことだと思う。

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