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ミステリの祭典

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生首岬の殺人
警視庁捜査一課事件簿

作家 阿井渉介
出版日1994年08月
平均点4.00点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2022/01/19 21:21登録)
(ネタバレなしです) 1994年発表の警視庁捜査一課事件簿シリーズ第4作の本格派推理小説です。作者は「冒頭に魅力的な謎を提出すること。そして、意外な結末」を意識しているコメントを寄せていて、ある程度それを具現化していると思いますがそれを超えることもしていないように思います。つまり中盤が間延びしているのですね。序盤で生首をくわえた犬の目撃事件と風変わりな身代金を要求する誘拐事件を発生させて謎づくりに関してはまずまずなのですがその後は盛り上がりに乏しく、第4章で「捜査が進むにつれて、さらに複雑さは増し、事件の輪郭がぼやけてきた」と表現しているように展開がぐだぐだ気味になって読む方に集中力が求められます。しかし最終章で明かされる大トリック説明で私の途切れた集中力はやっとつながりました(笑)。基本的アイデアは米国の某本格派推理小説に前例がありますが、そちらでトリックを見破られる手掛かりとして使われたものを本書では逆用してトリック成立に使っているのが工夫です。シナリオライター出身の作者ならではの、見映えするトリックといえるでしょう。

No.2 2点 ∠渉
(2015/01/16 17:16登録)
本シリーズ初読。路上に生首が転がっていた事件となんだか頓珍漢な誘拐事件が同時に起こって、捜査を進めるうちに二つの事件が関連していることがわかっていく警察ミステリー。
これ一応シリーズもので、シリーズ名が「警視庁捜査一課事件簿」というなんとも冴えない題なんですが、読んでみてまぁまぁ納得笑。はみ出し者の名刑事と真面目すぎで不器用な刑事のなんとも昔風な2時間刑事もののバディみたいなコンビで、捜査もなかなか地道。これには参ったなぁ(実はそうでもないが)。でもってそのはみ出しデカの菱谷さんの推理はほとんど直感だし、論理的じゃない笑。まぁトリックが破綻してれば推理もそうなりますが、相棒の堀にしても捜査をすすめるうえでのインスピレーションは、事件関係者の立場やパーソナリティで、ほぼ感情論である。とまぁなんともお粗末なような感じがするが、このお粗末感はわりに気に入っている。この事件にこの刑事は過不足なしで割り切れるスケールだったと思う。
また、不可能趣味も溢れている本作なのだが、まぁなんとか動機で全てが片付いているような感じだった。逆にいえば動機が強すぎるので不可能趣味としての味は薄くなったような。この動機でこの犯罪ありか、とはならなかった。まぁいいんだけど。

これがシリーズ何作目の作品なのかは知りませんが、本作では、切れ者刑事・菱谷の相棒・堀が菱谷の娘と付き合っていて、その二人の関係が少し倦怠気味になってしまうというストーリーが作品の味付けになっているんですが、よりによっての倦怠気味でだるくなってしまう読者であった。

No.1 5点 E-BANKER
(2009/08/18 22:03登録)
警視庁捜査一課事件簿シリーズ。
引き続き不可能趣味溢れるプロットが冴えてますが・・・
~都内の住宅街で偶然カメラマンが写真に捕らえた、男の生首をくわえた黒い犬の姿。そして時を同じくして、女性銀行員の誘拐事件が発生。犯人の要求は、指定する5つの会社に融資を行うこと。各社は倒産寸前という共通点のほか、何のつながりも見当たらない。奇妙な2つの事件の、点と点が結びついた結果の先にあるものとは?~

相変わらず重~い作風です。
阿井氏の作品といえば、以前の「列車シリーズ」から一貫して不可能趣味と背後に横たわる過去からの怨恨・・・といったところでしょうが、
本作もそれに倣ってます。
ただ、本シリーズになって、大胆な物理トリックはさすがに鳴りを潜め、現実的な路線にややシフト。
今回は、アリバイトリックがメインですが、従来からの手法を一捻りしてあり、その点だけが救いでしょうか。
全体としては、ちょっと低調な作品かもしれませんねぇー
(真犯人の執念に脱帽!)

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