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ミステリの祭典

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本格ミステリ・クロニクル300

作家 事典・ガイド
出版日2002年09月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 メルカトル
(2023/01/21 22:23登録)
本書は、日本の本格ミステリ十五年史を概観するブックガイドである。編年体で作品を並べ、各年ごとの状況を素描するページを設けた。本書自体が年表の役割を果たせるような作りになっている。取り上げた作品は三〇〇冊。作品の選定にあたっては、単なるベスト作品選びではなく…あの時、その年、あるいは五年、十年、十五年のスパンで、本格シーンにおいて特徴的な役割を果たした作品をピックアップする。
『BOOK』データベースより。

新本格が開幕してからの十五年を振り返るミステリ・ガイドブック。一般的な単行本より一回り大きく、内容もぎっしり詰まっているので、読み応えは十分です。コラムや主だった作家たちによるショート・エッセイも挟まれています。しかし、チョイスが当たり前すぎて途中で飽きてきました、ディケイドの時はそうはならなかったんですけどね。これは読んでないなとか見逃していたと云った作品がほとんどなくて、ちょっとがっかりしました。もう少し隠れた名作や幻の傑作的なのが入っているともっと良かったのではないかと思います。

300冊中既読は174冊という結果に。如何にも中途半端な数字ですが、自分としてはよく読んだ方だと勝手に満足しています。約6割ですからね、打率としてはまあ高いほうじゃないですかね。
それにしても、これだけ取り上げられていて、未読でしかも読んでみたいと思った作品は2、3冊で、その意味ではあまり参考にはなりませんでした。ただ、ミステリ初心者には恰好のガイド本である事には違いないでしょう。
最後に思ったのは、どこかの出版社で裏ベストみたいなのを出してくれないかなって事でした。

No.2 7点 Tetchy
(2015/11/01 20:41登録)
2000年代の10年間の本格ミステリシーンを振り返ったガイドブック『本格ミステリ・ディケイド300』の前身となったのが本書。1987年から2002年の足掛け16年間の本格ミステリシーンを振り返っている。この中途半端な年代の意味はいわゆる新本格という新たな本格ミステリのムーヴメントが生まれた年、即ち綾辻行人が『十角館の殺人』でデビューした1987年から15周年経ったことを示している。綾辻以後の本格ミステリの発展と変容をつぶさに追っており、資料的にも実に興味深い内容となっている。

綾辻登場から新本格1期生と云われる法月綸太郎、歌野晶午、我孫子武丸に東京創元社からデビューしたもう1つの新本格の書き手、有栖川有栖と日常の謎という新たなジャンルをもたらした北村薫の登場、後を追うかの如く登場した二階堂黎人に京極夏彦と森博嗣の鮮烈なデビュー、そして巻末の評論に笠井潔に「脱格系」と称された佐藤友哉に浦賀和宏、西尾維新と作家の名前を挙げるだけで本格ミステリがその15年で辿った変容が解るのが興味深い。それらの激しい変容はまるでそれまでになかった新製品が世に出て急激に発展していくような右肩上がりの進化を見ているようだ。例えばテレビが発売され、白黒からカラーになり、そしてブラウン管から液晶へ、さらにアナログ放送からデジタル放送へと急激に変わっていったように。
そしてそれらのムーヴメントでは必ず多くの才能が結集するのだが、中には急激に大量化した作家群、作品群の中に一定のレベルにありながらもあまりにも迅い流れに追いつけず、埋没していった作家たちも数多いる。本書でもそれらの作家の作品が挙がっており、実に感慨深いものを感じた。

本書の内容は私の読書遍歴と当時のミステリシーンを追想するような形で読んだ。まず浮かんだ正直な感想は、「非常に懐かしい」だった。昔読んだ作品を改めてその存在意義と本格ミステリにおける価値を批評的に読むことで新たな知見を得ることもしばしばであった。
本書が刊行されたのは2002年で今なお文庫化されていない。このようなガイドブックは歴史的資料として非常に価値があるだけに、絶版化されることが運命づけられている単行本でしか刊行されていないのは非常にもったいない。そして刊行から13年経った今なお読んでもその内容には時代錯誤的な認識がなく、今に続く本格ミステリに通ずる源流を読み取ることができる(笠井氏の脱格・破格の名称はさすがに死語だと思ったが)。

早川書房から24年ぶりに海外ミステリ・ハンドブックやSFハンドブック、スパイ・冒険小説ハンドブックが新たに刊行されたり、マストリード100シリーズとして色んな趣向でミステリのガイドブックが刊行されたりとなぜか最近はガイドブック刊行が喧しい。そんな今だからこそ本書もまた文庫化されてはいかがだろうか。

しかし1990年の時点で既に積読本があることにショックを受けてしまった。ホント私の積読本は死ぬまでに捌けきれるのだろうか。それが一番の問題だ。

No.1 6点 江守森江
(2009/05/28 07:59登録)
新本格15年間を総括した作品ガイド。
年度別・順に作品を取り上げ、更に新本格作家達のコラムもある。
限られた時代の分だけだが必読作品は網羅されていてチェックするのにも便利。
300と設定した為に無理やり掲載した感のある作品が混じっているので読者自身での選別も必要な点に不満が残る。

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