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ミステリの祭典

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小人たちがこわいので
カーク将軍&レヴィン卿

作家 ジョン・ブラックバーン
出版日1973年07月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 7点 斎藤警部
(2021/09/06 15:09登録)
ほー?これ本格ミステリなんだ。。徐々に島荘っぽくなるし。。本格映えするフックがいくつもあるし。。って思って読んでたんですけどね。大型物理トリックの予感もなかなかで、飛行機のエンジン音微調整に異様にこだわるとか。。 ジャンルミックス × 素材ミックス(伝説の遺跡発掘、公害の犯人捜し、東西冷戦、ナチスの亡霊、ヒッピーnotビート族、バイオテロ。。)の限界詰め込み小説なんですかね。ホラーラーでない自分にはその旧モダン・ホラーの終局だか新モダンホラーの黎明だかのスリルが殆ど感じ取れず、専ら本格ミステリと政治絡みサスペンスの熱い併走、に何だかよく分からない面白要素が闖入して来たぞ、てぇなもんでした。結果的に前述の飛行機エンジンの件こそ本作のメインバカトリックとして自分は認識することになります。んでやっぱり島荘のような熱さでぶち抜く最終コーナー。。。最後は、島荘、とうとう裏切るw みたいな〆。 当初の憶測で期待した本格ミステリ寄りの結末ではなかったけれど、なんだか混乱したけど(エピローグはもやもやしただけ)、要は全体の面白さが勝ったのですね。 小説技法的には、古い文庫解説にもあったけど、会話の捌きが上手いです。

むかし職場の先輩が「この本だけは本っ当に怖かった..」と語っていたのが今も記憶に鮮やかな一冊です。(すみません、自分は怖がれなくて..) それと、昔の創元推理文庫巻末目録でフレドリック・ブラウンの次に並んでいたせいか、本作もブラウンの作品だとしばらく思い込んでいたものです。「三人のこびと」に引っ張られたのもあるかも。あとチェイスの一連の邦題ともちょっとイメージかぶってましたね。

No.3 6点 クリスティ再読
(2016/08/15 23:54登録)
もう6・7年前なんだけど、実家に転がってた本作読んで、「おお、面白い!」となって、探してみたら時ならぬブラックバーン再評価の真っ最中。「何でイマドキ?」と思わんでもなかったが、評者これを「黒萌え祭」なんて呼んで、ありがたく論創社で出た3冊も読ませてもらったよ。で...なんだが、面白かったのは本作と「薔薇の環」くらいかな(「リマから来た男」は読めなかった...残念)。やはり創元のセレクション力はまともだったわけだ。
まあ本作、そう名乗ってないけど一種のクトゥルフ物だよ。背景世界もR.E.ハワードのホラーとかなり近いし、ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」っぽいモチーフだしね。ジェット機の爆音が詠唱となるあたり秀逸で、こういうのがモダン・ホラーらしいあたりだから、SFとホラーの..とか今更言い出すのも評者は?と思う。それならラヴクラフトの「狂気山脈」とかどうなのよ。
というよりも、黒萌え祭なんだけど、どうもみなさん誤解してないか?どっちか言うとブラックバーンって作家は文章はうまいし、サスペンスも盛り上がるし、構成も工夫があってしっかりしているにもかかわらず、ネタがどうしてもB級で脱力する...という残念なあたりを、生温かい目で愛でる、というのがその趣旨だったように感じているよ。まあだから本作とかちゃんとクトゥルフ物の系譜にうまく入れるといいように思う。B級C級度で言ったら本作の比じゃないヒドいの結構あの世界あるわけでね...

No.2 5点 kanamori
(2015/03/10 22:00登録)
北ウェールズ山地の別荘小屋で休暇を過ごす細菌学者マーカス・レヴィン卿と妻のタニアは、不気味な民間伝承がある岩山〈騎士の丘〉で航空機会社社長の墜死体に遭遇する。そして、最近その会社絡みでロンドンで続発する奇怪な事故が、どこかで結びついているのではと調査に乗り出すが----------。

英国情報局カーク将軍&レヴィン卿コンビが地球規模の危機に対峙するB級ホラー、シリーズ最終作。
とにかく次々と繰り出されるネタの数がハンパない。絶滅した古代人伝承が主軸となるが、予知夢と不滅の霊魂、廃水汚染による謎の病原菌、ナチス残党のマッドサイエンス、ソ連技術者の亡命、カトリックとプロテスタントの宗教対立などなど。スティーヴン・キングなら上下巻1000ページを超えるぐらいの超大作に仕上げるところを、文庫の240ページに収めるのだからやはり無理があります。これらのネタは全てラストに明らかになる壮大なバカ真相に繋がる伏線ではあるけれど、あまりに詰め込みすぎて整理しきれておらず、物語にのめりこむという風にはならなかった。

No.1 3点 mini
(2009/06/15 09:57登録)
S・キングやクーンツらのモダンホラー作家の登場によって主導権がアメリカに移る以前は、ホラーと言えば英国が主流だった
ブラックバーンはそんな英国産ホラーの中心作家の一人だ
代表作と言われる「小人たちがこわいので」も1972年の作だが、P・ストラウブが1973年に、S・キングが1974年に登場しているので、ぎりぎりアメリカン・モダンホラーの登場直前に書かれたわけだ
上記の事情を鑑みてもブラックバーンは古い時代のホラー作家という事になってしまうが、実は産業汚染とか結構近代的なテーマを扱っている
各種評論でも本格やサスペンスからSFホラーなど様々なジャンルを強引に、それも融合ではなくてただ混ぜただけという雑多なジャンル・ミックス型というのが特徴だと言われている
つまり各ジャンルの境界線上に存在するのではなく、どのジャンルの要素も独立して持ってる感じ
実際読んでみると確かに各種評論通りで、それこそ微生物というSF科学的要素から、古代の伝承的恐怖までが良い意味で融合せずに、各種要素を切り貼りしたゴチャ混ぜ状態で読者の前に繰り広げられる
悪く言えばどのジャンル的にも中途半端ではあるが、むしろ各種要素が混濁した感じが魅力になっていると弁護したい

ただねえ、文章が読み難くて通常の三倍位時間がかかったぞ
読んでてス~っと頭の中に入ってこないんだよ
この読み難さゆえに他の作品も読んでみたいと思わなかった

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