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ミステリの祭典

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再び消されかけた男
チャーリー・マフィンシリーズ

作家 ブライアン・フリーマントル
出版日1981年10月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 tider-tiger
(2020/11/25 13:36登録)
~チャーリー・マフィンが消されかけて早二年の月日が流れていた。チャーリーは大陸での逃亡生活に心身ともに疲れてきており、妻が心配するほどに酒量も増えていた。妻との仲もギクシャクし始めている。そんな日々にあって、チャーリーは敬愛する元上司ウィロビー卿の墓参りのためにイギリスに戻ることを思い立つ。こうしたチャーリーの動きはかつて出し抜いてやった米英情報部の面々の知るところとなった。~

1978年イギリス。『チャーリー・マフィンシリーズ』の二作目。一作目のラストからして二作目はどうすんのこれ? と思った読者は多い。どの面下げて帰って来るのかチャーリー・マフィン。少し荒んだ堅焼きとなって帰って来た。原題は『Crap hands,Here comes Charlie』
全体的には前作と比しておとなしく小粒感はある。粋な趣向が少しはあるものの、物足りなさを感じる人もいるかと思う。良くも悪くも堅実。愉しく読めるが、安心して読めてしまうのが本書の場合はマイナス点か。
序盤でのチャーリーの荒んだ雰囲気や危険察知能力の衰えは読み手にまで閉塞感を覚えさせる。それはまあいいのだが、落ち目のチャーリーにレベルを合わせるかのように敵がマヌケなことをし過ぎるのがちょっと気になる。敵の中に凄腕がいてチャーリーが危機に瀕して甦っていくみたいな趣向があってもよかったのではないかと思う。
物語の落とし方は悪いとは言わないが、個人的には納得がいかない。
抜きんでた才というか独特の味わいというべきか、そういった書きっぷりはまだ健在。視点移動の強引さも健在。
プロットが若干弱いので水準作+αといったところか。

年長の知り合いにフリーマントルの愛読者がいる。以前この人が真顔で訊いてきたことがあった。
「フリーマントルって一時は本屋にズラッと並んでたけど、いつも不思議に思ってたんだよ。これって一体どういう人が読んでるんだろうって。なんか想像つかないんだよな。どう思う?」
困惑しつつも笑ってしまった。

No.2 7点 あびびび
(2011/03/23 16:02登録)
図書館で、「消されかけた男」を予約したつもりだったが、係員の入力ミスか?こちらが届けられた。

それまでのスパイ小説を変えた?と言われるだけあって、主人公・チャーリーマフィンの深層心理、行動力は興味深い。最後までおもしろく読めたが、完結的?なムードがあり、この作品以上に評価の高い前作が読めないのはつらい。

No.1 7点 Tetchy
(2009/04/13 23:40登録)
前作『消されかけた男』の続きから物語は始まる。
しかし前作に比べると本作は小粒な印象を受けてしまう。今回は逃亡者としてのチャーリーの緊張感を軸にしてチャーリー抹殺のための英国情報部とCIAの丁々発止のやりとりを描いているのだが、プロットがストーリーに上手く溶け込まず、あざといまでに露見しているきらいがあり、チャーリーが逆転に転じる敵側のミスがあからさま過ぎる。

そして最後の方で退場するある人物は、物語の構成とチャーリーの生き方でそうせざるを得ないというのは解るけれど、ちょっとベタな始末のつけ方だなぁ。

最後に仕掛けるチャーリーの復讐。これがチャーリーという男の恐ろしさを表している。

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