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ミステリの祭典

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ブルー・ハンマー
リュウ・アーチャーシリーズ

作家 ロス・マクドナルド
出版日1978年12月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2019/03/09 21:52登録)
「別れの顔」以降のロスマクって、精神分析カウンセラー小説みたいなもので、小説としての結構がなおざり気味で作家としていかがなものか?と評者は思っているのだけど、最後の本作はこの陰鬱路線にも飽きてきたのか、雰囲気が明るめでプロットの二転三転もあって復調を見せてきている。それでも、父親探し部分は少々ムリ筋っぽい気もするし、毒親にトラウマを植え付けられた若いカップルは途中で登場しなくなるし...と陰鬱路線の定番要素がストーリーの妨げにしかなっていないので、完全復調とまでは言えない。次の作品こそ勝負だったろうから、見たかったな。
で絵を追って...ってネタ、短編になかったかな(「ひげのある女」)。本作実は真相が二重底で、一段目の真相だと動機とか経緯が今ひとつ納得がいかないのが、二番底で納得がいく。まあ読んでてこの二重底は見当がつくんだけど、謎の解明感がしっかり出るので、これがいいあたり。ただしこの二番底の解決は、細部をくだくだしく説明してないので、読者がうまく頭の中で補完する必要がある。ここらの見切りは読者によっては不親切と取るか、粋な省筆とみるか、はあるかもね。
ロスマクをパズラーとして読む、というのが流行ったんだけども、それだったら本作が一番パズラー寄りかもしれないよ。ロスマクって本当に試行錯誤の作家だったような思いが評者はある....

No.2 8点 Tetchy
(2009/05/25 23:10登録)
ロス・マクドナルドの遺作とされる本作はごく一般に駄作だと云われるが、私にしてみれば物語の焦点が常にぶれず、物語の軸が常に明確であったせいか点数的には高いものとなった。また盗まれた絵画を追うという従来の失踪人捜しとは毛色の違う展開が新鮮だったことも物語に魅力を感じた一助になっている。
ともあれ、確かに登場人物構成が二転三転、はたまた四転五転し、プロットが結局破綻していないのか判断が付きかねるが、やはり最後にアーチャーが犯人に呼びかける言葉は物語の終焉にダメを押す。
さらにアーチャーが生まれ故郷に行き、今までストーリーに描かれたことのない結婚生活について触れるのもシリーズ最後の原点回帰の様相を呈しており、著者がまさにアーチャーシリーズに決着を付けようとしていたようにも思える。
何しろアーチャーが恋患いをするのだから面白い。
これは感情を押し殺した傍観者からの脱却を意味し、感情を持った主人公はもはや探偵たる資格を持たないというメタファーでアーチャー御役御免の意味合いを強く感じた。

No.1 8点 ロビン
(2009/01/21 23:05登録)
ロスマク最後の作品。富豪の家から盗まれた一枚の絵画を探し出して欲しいという依頼を受けて、事件に乗り出すアーチャー。今までの「人捜し」と違い、絵を捜し出すという目的でアーチャーは動き出すが、この絵の存在が一つのクッションになっている。今回は頭の中での真相の構築力が及ばないほど、物語は四転五転と様相を変え続けてこちらに提示されてくる。
その真相自体は、ロスマクの一つのパターンではあるが、変わらない中でも驚くべきものをシリーズファンは求めているので、満足です。

アーチャーもいつのまにか五十代に突入かぁ。
しかし、彼の最後の台詞とその場面は、胸を打ちます。

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