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ミステリの祭典

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世界ミステリ作家事典 [本格派篇]
森英俊編

作家 事典・ガイド
出版日1998年01月
平均点9.00点
書評数4人

No.4 10点 mini
(2010/11/15 10:11登録)
この事典により、なぜ海外ものは原文で読む必要性を痛感しなければならないのか全く理解出来ない
この事典が契機となって、国書刊行会、原書房、論創社、長崎出版、河出書房などから次々刊行された経緯を考えれば、我々読者側は翻訳されたものを素直に読めばいいのである

さて本題に入ろう、この事典の肝は本書の基本方針に言及した森氏の序文にあり、特に3ページ目に注目だ
例を挙げよう、解説が1人1ページ程度な作家も居るが一般的メジャー作家の項目には当然ながらページ数が多く割かれている
カー:7ページ
クイーン:10ページ
クリスティ:10ページ
と言った具合である(解説のみで書誌的著作リストの部分は除く)
これに対し、海外では一定の評価があり、本来はもっと早く日本に紹介されるべき作家だったのに、乱歩時代の嗜好なのか不当に無視されてきたり、アリンガムやイネスのように誤解されてきた作家達には意図的にページ数が多く割かれているのに気付く、例えば
マージェリー・アリンガム:6ページ
マイケル・イネス:7ページ
レックス・スタウト:6ページ
ナイオ・マーシュ:3ページ
グラディス・ミッチェル:3ページ
ジョン・ロード:5ページ
あと古典作家だがオースチン・フリーマン:6ページ
などである
これらの作家達は従来の作家人名事典ではあっさりした紹介しかされてこなかった作家達である
スタウトだけはアメリカ作家だが日本では人気が無かった
カーですら7ページなのに、イネスが同ページ数
ドイルですらほぼ3ページ位なのに、同期のライヴァルであるフリーマンには倍の6ページも費やして解説しているのだ
この事典の性格や狙いが良く分かるではないか
つまり今更分かりきった作家よりも、従来無視されていた作家を重点的に光を当てようとの意図が見て取れる
アリンガム、イネス、ミッチェル、フリーマンらが一時期次々に訳されたのも、この事典の影響なのは明らかである
その他にもセイヤーズ:7ページ、バークリー:8ページなどもこだわりを感じる

逆に面白いのは、日本では従来から翻訳に恵まれてきたが海外における重要度が低い作家には気合が入ってない事で、例えば仏作家のステーマンは酷評してるしヴァン・ダインは3ページ、海外では忘れ去られた存在なのに日本だけで異常なマニア人気があるロジャー・スカーレットに至ってはたった2ページしかなくて、しかも解説も冷めた雰囲気である

古い作家だけでなく現代作家にも目を向けており、特にエリス・ピーターズ:5ページ、ポール・ドハティ:3ページなどには、日本では従来人気になり難かった歴史ミステリーへの誘いという意味もあるのだろう
もっともポール・ドハティはいざ紹介されると期待外れだったが(苦笑)
アン・クリーヴスやジル・マゴーンなどと並び称される未紹介のグェンドリン・バトラー:3ページ、男性作家だとデイヴィッド・ウィリアムズなどは解説にも熱気があり、翻訳が期待されるところだ
未紹介と言えば黄金時代や戦後の本格作家にも未だ未紹介のままの作家が何人か居り、メアリー・フィット、ナイジェル・フィッツジェラルドなどもどこぞの出版社が翻訳して欲しいものだ
特に未紹介のまま残った最後の大物フィービ・アトウッド・テイラーは、黄金時代後期に活躍し海外選出の里程標にも名前が載っており最優先で紹介して欲しい作家である

No.3 6点 江守森江
(2010/11/14 23:18登録)
国産ミステリに主軸を置き、翻訳ミステリはごく一部かドラマ化作品視聴後のおさらいが中心なミステリ読者なので当然購入はしていない。
でも何故か数年前に丸一日(開館時間目一杯)図書館で眺めた事がある。
当時、ちょっとしたミステリ資料(ドラマ絡み)を作成したかったので近場の図書館をあたったが蔵書が無く、所蔵していた他地区の図書館まで出向いた。
しかも貸出不可で館内閲覧のみの貴重本扱いだった事(しかも書庫保管)に驚いた思い出がある。
そして、海外ミステリを楽しむには(未翻訳作品にモヤモヤ感があり)自力で原書を読める事が必須と痛感し、今更海外ミステリの為に語学を勉強する気力もなく海外ミステリへの興味が更に薄らいだ&国産ミステリ重視に拍車が掛かった分岐点でもあった。
※追記:上記への批判に対する返答
他者のミステリーを楽しむ姿勢を批判するなど当サイトのマナー違反に該当するし、わざわざ書き込む大人げなさに呆れる。
翻訳とせず海外と敢えて書き区別したし、海外作品の海外での評価を論じるなら未翻訳作品は原書をあたる程度の努力はすべきだろうと主張しておこう。
私はそんな興味も努力する気もないので今まで通りの楽しみ方を貫く所存。追記終了※
最近は、AXNミステリーで未翻訳作品等のドラマ化なども視聴しているので、当時作成した自前の資料は結構重宝している。
なんやかやで‘凄い仕事’ではあるが私には‘無用に近い仕事’なので6点。
※国内ミステリードラマに詳しい人と共著で「世界ミステリー映画・ドラマ事典」を作成してくれないだろうか!

No.2 10点 Tetchy
(2010/11/14 21:39登録)
まさに全てのミステリファン必携の書。
こういう仕事は誰かがやらねばならなかった。日本のミステリ史の編纂でさえ、あの中島河太郎をもってしても成し遂げずに道半ばにして他界した。
しかし森氏はさらに広範な世界ミステリの作家事典を編むことを成し遂げた。しかも当時40歳という若さで。まさに驚嘆に値する。日本ミステリ界に森英俊氏を得た事は途轍もない幸運だと思うし、また至宝として扱うべきである。
恐らく本人はものすごい苦労をかけただろう。しかしそれが苦労であるとは感じなかったはずだ。半ば嬉々としながら作業をしていたはずだ。それはその続きの[ハードボイルド・警察小説・サスペンス篇]が数年後に編まれた事からも明らかだ。
本作の功績は刊行後国書刊行会が、そして8年後、論創社がミステリ叢書シリーズとしてこの森氏が掲げたまだ見ぬ傑作群を続々と訳出している事からも証明されている。そして森氏の掲げた作家にはまだまだ紹介されていない作家が山ほどいるのだ。
特に`97年当時に名前さえ知られていない作家達を積極的に物量的にもかなり多く紹介している事が世のミステリ読者の触手を動かして止まないのだ。
恐らく日本ミステリ一辺倒の方々には何の興味も持たない1冊かもしれない。しかしミステリを愛する者、特に海外ミステリをこよなく愛する者にとっては垂涎の書であるのは間違いない。なぜなら私がそうだからだ。7,000円は正直安いと思う。
正に森氏でなければ成し遂げられなかった仕事。今後この事典がせめて10年に一度は改訂される事を期待したい。そしていずれは彼の衣鉢を継ぐ者が現れんことを心の底から祈らずにいられない。

No.1 10点 nukkam
(2009/01/28 14:37登録)
この種の本だと普通は翻訳された作家と作品のみの紹介に留まるのですが、1998年発表の本書はまだ日本に未紹介の作家まで数多く紹介しているのが凄いです。初版で7000円以上の高額にもかかわらず本書を買ったことは全く後悔していません。自分がまだ読んでない面白そうな作品がこんなにあるのかと嬉しくなりました。ネタバレにならないように配慮していますのでビギナー読者にもお勧めです。何度も読んでぼろぼろになってしまい、ついに買い直しました(それも後悔してません)。

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