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ミステリの祭典

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陰獣

作家 江戸川乱歩
出版日1973年09月
平均点7.17点
書評数23人

No.3 7点 りゅう
(2010/05/08 15:15登録)
 登場人物が少ないこともあって、真相に近いことは推定できたが、真相と同じことまでは推定できなかった。
 本作品のトリックについて、横溝正史が「真説金田一耕助」の中で「世界最大のトリックだといまでも信じている」と書いている。古典的なトリックを発展させたものだが、世界最大というのは横溝正史のリップサービスではないかと思う。

(ここから完全ネタバレ。注意!)
 設定に若干無理があると思う。
 大江春泥は一切目撃されていない設定の方が良かったと思う。わざわざ、浮浪人を雇うようなことをするだろうか。この目撃情報が真相を推理するうえでの障害となっている。
 死体が川で流される保証がない。流されなければ犯人が真っ先に疑われる。

No.2 8点
(2010/03/23 22:13登録)
本作に登場する謎の男の名前は平田一郎、一方乱歩の本名は平井太郎ですから、そこからしてもね。
『屋根裏の遊戯』を中心に、最後には『パノラマ国』だの『一銭銅貨』だの、大江春泥作とされる小説のタイトルが挙げられていて、自己パロディ色が強い作品です。もちろんユーモア・ミステリではないのですが。乱歩自身は、その春泥と作中の「私」こと寒川の理知的な両面を持った作家と言えるでしょうから、そのあたりの自己分析も興味深いところです。
リドル・ストーリーといっても、まず筋道の通った解決をつけた後、本当にそれがすべての真相だったのかどうか、不安を感じたまま終わるというだけですから、ちょっと中途半端な気がしなくもありません。ただ、小山田氏の死因についての説明は筋は通っていても根拠薄弱なので、それをカバーしているとも言えそうです。

No.1 7点 シュウ
(2008/11/25 22:57登録)
乱歩作品や当時の乱歩に対する噂のパロディが楽しい作品です。
最後を曖昧にしたことで当時かなり批判を受けたらしいですが、確かにこれは蛇足だと思います。
でもネタバレになるので詳しくは言えませんが、曖昧な真相で主人公をネチネチ苦しめる方が女版乱歩として「らしい」のでこれはこれでありだと思います。

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