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ミステリの祭典

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殺す人形

作家 ルース・レンデル
出版日1985年12月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 HORNET
(2020/02/11 17:12登録)
 「十六歳の誕生日を間近に控えた冬、パップは悪魔に魂を売った」-冒頭の一文は「ロウフィールド館」に劣らず魅力的だったが、今回はその後の展開がそれに耐え得なかった。
 パップは中盤で常識的になり、狂気に走るメインは姉のドリー。ワイン(アルコール)への依存がどんどん深くなり、次第に壊れていく様はレンデルらしくよく描けていて楽しめたが、全体的に必要以上に冗長。
 何よりも、伏線として描かれているニートのディアミットが、いつになったら本線に絡んでくるのかと思っていたが、結局最後偶然にぶつかっただけというのが消化不良だった。

No.2 4点
(2013/10/10 10:23登録)
ホラー系サイコ・サスペンス。
全体としてあまり合わなかったが、文章によりじわじわと迫ってくる狂気は感じられた。『ロウフィールド館の惨劇』と同様、描写の巧さによるものなのか。
「十六歳の誕生日を間近に控えた冬、パップは悪魔に魂を売った。」と、『ロウフィールド』と同様、冒頭の一文には衝撃がある。主人公の顔のアザというハンデについても、『ロウフィールド』との共通点を感じた。でも、それらによる効果は薄めだった。
本作はホラー系だからもっともっと怖いはずだが、ストーリーに面白さを見出せなかったせいか、それほどでもなかった。

オカルティックな筋は決して悪いとは思わないが、じわじわとしすぎる展開のせいか(裏の解説に書いてあった事件の発生が中盤ごろ)、前半が退屈に感じた(後半も似たようなものだが)。
並行して進む、失業者のサイド・ストーリーはうま味がなく、しかも地味。だから、早くメインのストーリーにリンクしてほしいと願いながら読んでいた。つながってからもうま味なし。
プロットがしっかりした、スピード感のある展開の小説に慣れてしまったせいなのか。
情景描写はたしかに上手い。こういった文章だけでじっくりと読ませるエンタテイメント小説にも、もっと慣れないといかんなと、つくづく感じた。

No.1 4点 Tetchy
(2009/09/22 20:10登録)
レンデルにしては珍しく整然さを欠いている。
ストーリー展開は確かに従来の作品群同様、全く読めないのだが、今回はそれが読書の牽引力になっていない。
昔から失語症など些細なハンディキャップを素材にして普段到底あり得ないような事態を丹念に心理描写を重ねることで絶大な説得力を持って読書を引っ張ってきたのだが、今回はあまりに魔術や心霊に寄りかかってしまったため、今一歩説得力に欠け、ノレなかった。
期待というより心配された結末はチープなものだった。

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