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ミステリの祭典

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死が二人を別つまで
ウェクスフォード警部

作家 ルース・レンデル
出版日1987年06月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2024/10/26 23:27登録)
(ネタバレなし)
 1960年代半ばの英国。40歳代末の教区牧師ヘンリー・アーチェリーとその妻メアリは、オックスフォード大学に通う現役学生で21歳の息子チャールズから、恋人テリーサ・カーショウを結婚希望の相手だと紹介された。だがそのテリーサは、実は自分の実父は16年前に殺人罪で絞首刑になっているのだと、驚くべき事実を打ち明けた。とはいえ、テリーサの実母で、今はテリーサの現在の父でもあるトム・カーショウと再婚したアイリーンは、実は私の娘の父は無実なのだと語ってもいるようだ? ヘンリーは息子の婚約者の血筋が無実であることを願い、16年前の殺人事件を担当したレジナルド・ウェクスフォード主席警部に会いに行くが。

 1967年の英国作品。ウェクスフォードシリーズの第二弾。
 創元文庫の解説で都筑道夫も書いているが、シリーズ第二作からレギュラー名探偵の過去の実績に物言いがつけられるという趣向が何ともはや。
 だってこの手の<過去の事件掘り起こしもの>って、レギュラー名探偵がほかの杜撰な捜査陣の雑な仕事を見直すものだしねえ。主役探偵の過去の栄光にケチをつけるという、ある意味でアナーキーな文芸がなんとも面白い。

 まあそれだけに決着はアレコレ見えてしまうのではないか? と思いながら読み進んだ。物語の実質的な主人公はアマチュア探偵として動き回る父親ヘンリーで、準主人公的に、恋人の周辺の真実を探る息子チャールズの動向も描かれる。
 適度に重厚感はある作品だが、一方で話はサクサク進み、リーダビリティも好調でなかなか面白い。あまり詳しくは書かないが、え? そっちの方向に行くの? というキャラクタードラマの妙味も豊かであった。

 で、結末は、半分こっちの予想のアタリで、半分、意表を突かれた感じ。ちょっと古い作りの作劇のような気もするが、その分、まとまりの良さも感じる。もちろんウェクスフォードの過去の仕事が結局は正しかったのかそーでなかったのかは、ここでは書かない。
(なお、誠に恐縮ながら、Tetchyさんのレビューはネタバレになっているので、未読の方は注意された方がよいです。)

 で、また都筑の解説に同調することになるのだけれど、とにかくシリーズ二作目にこんなネタ持ってきたレンデルに、改めてこっちも惚れ込んだ。

 ただ気になったのは、ウェクスフォードは現在55歳で、16年前の事件が自分が初めて担当して解決した殺人事件だと言ってるんだけど、つまり39歳で初めてそっちの方面の初手柄ってことになるんだよね? これってかなり遅くないか? 遅咲きの名探偵だったということか。

 何はともあれ、初期レンデル、期待通りになかなか面白かった。またそのうち、このシリーズを楽しみたい。

No.2 6点 nukkam
(2011/05/06 09:36登録)
(ネタバレなしです) 1967年に出版された本書はウェクスフォードシリーズ第2作目にして異色作ともいうべき作品。解決済みの事件を再度調べ直す本格派推理小説は、アガサ・クリスティーの「五匹の子豚」(1942年)や「マギンティ夫人は死んだ」(1952年)、エラリー・クイーンの「フォックス家の殺人」(1945年)、レジナルド・ヒルの「甦った女」(1992年)などいくつもありますが、最初に解決していたのが名探偵(ウェクスフォード)という設定が非常に珍しいです。17章の最後で明かされた真相には肩透かしと感じる読者もいるかもしれませんが、ウェクスフォードを第三者の視点から描写したり、アマチュア探偵の何とも心もとない行動を描いたりと本書ならではの読みどころが沢山あります。

No.1 7点 Tetchy
(2009/09/21 23:51登録)
ウェクスフォードを外側から描く、ウェクスフォード物の異色作でどちらかと云えばノン・シリーズに近い。しかし、ウェクスフォードが登場人物の目にどのように映っているのかが垣間見れて面白かった。これほど影響力の強い人物だとは思わなかった。
主人公の牧師、アーチェリーをして「あの男は神の権化」とまで云わしめるのは過剰なる賛辞だと思うが。
結局、「事実」はなんら変わらなかった。ただ「真実」が無機質な人間2人を変えた。
レンデル物では珍しい、爽やかな読後感だ。

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