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ミステリの祭典

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日本探偵小説全集(4)夢野久作集

作家 夢野久作
出版日1984年11月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 9点 みりん
(2023/09/22 17:48登録)
収録作は『瓶詰の地獄』『氷の涯』『ドグラ・マグラ』
いやあ、『氷の涯』以外は再読なのに読破に5日かかった。
ふつう再読って忘れた頃にするもんだろうけど、『ドグラ・マグラ』に関してはある程度本筋を整理している状態の方が楽しめるのではと思い再読。例によって細部は忘れていて「こんな文章、前読んだ時あったか?」と疑う始末です。

【ネタバレあります】



『瓶詰の地獄』 9点
4読目くらいですね。やはり妹とは一言も書かれていないため、兄弟ではないかという思いを強くしたところです。聖書に同性愛って禁止されてたり…? 3通の手紙の順番が実は3→2→1だというのが通説ですが、3通目は2人だけのユートピアに行ってしまったと牽強付会な解釈をしておこう。

『氷の涯』 7点
著者の数少ない100p超えの作品かな?ロシア好きなんですねぇ夢野久作。やはりこの作品でも、夢久は探偵小説というのを上空から冷静に俯瞰しているような印象を受けます。考えすぎですか?
なんやかんやあってラストのロマネスクな逃避行。そのなんやかんやは色々ワケアリでしたが、こういうの好きですよウン。

『ドグラ・マグラ』 10点
"胎児よ 胎児よ なぜ躍る 母親の心がわかって おそろしいのか"

ドグラ・マグラ単体の書評欄で「混沌の渦の中に実にウェットな人間ドラマが描かれている」みたいな書評があったのですが、それを見てから読むと確かにウェットな気がしてきたぞ。
「正木教授が生涯をかけて2つの学説を証明する物語」だと1読目の時は解釈したが、「2人の教授間での学術研究を超えた闘争」に上書き。呉一郎が2人の教授を両方とも「お父さん」と認識し、若林教授が激怒するシーン。初読時はすっかり忘れていたが腑に落ちた。
まあ相変わらず分からんところは分からんし、奇書に酔ってるだけな気もする。しかし、精神医療なんてないに等しく、狂人になると隔離される上にその家族までも村八分にされてしまうようなこの時代に一介の探偵小説家である夢野久作がこんな先見性のある物語を作ったというのはやはり脱帽せざるを得ない。

※冒頭のブウウウーンと夢遊病者の書いた作中作「ドグラマグラ」のブウウウーンではウの数が違うっての初めて知りました。気づいた人よう気づいたなと。

No.2 5点 メルカトル
(2019/09/26 22:14登録)
掌編、中編、長編の三作で構成された作品集。

『瓶詰の地獄』 短いながらある禁忌をテーマに掲げた、暗示に満ちた作品だと思います。なかなか面白い構成で、まあまあの印象ですかね。

『氷の涯』 正直読み難過ぎて内容が全く頭に入ってこなかったことしか、印象にありません。いつの間にか十五万円事件が起こっていて、主人公が推理を巡らしますが、これも想像レベルで、伏線を回収して真相を解明するといった本格物と考えると裏切られます。

『ドグラ・マグラ』 勿論これがメインですね。意を決して再チャレンジを試みましたが、やっぱり返り討ちって感じです。考えない脳髄、胎児の夢など興味深く読みましたが、事件のあらましを辿る辺りは退屈で仕方ありませんでした。
最後まで読んでも果たして自分の解釈が正しいのかどうか判然としません。まあ私ごときが一度や二度読んだくらいで十全に理解できてしまったら、奇書とは呼べないでしょう。
根幹と言うか本質は意外と単純だったのかもしれませんが、後付けで様々な要素を盛って盛って、そこに枝葉が勝手に広がって複雑怪奇なカオスを生み出したような印象を受けました。怪奇幻想精神科学小説とでも呼べば良いのか、それすら判りませんが、好きな人は大好きなんでしょうし、興味本位で読もうとする人は結構な確率で挫折するんでしょう。そんな小説です。

No.1 8点 ボナンザ
(2014/04/08 15:33登録)
やはり目玉はドグラ・マグラだろう。他の二作もおもしろいが、ドグラ・マグラの後だと印象が薄れてしまう。

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