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ミステリの祭典

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荒鷲の要塞

作家 アリステア・マクリーン
出版日1968年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 Tetchy
(2015/01/04 18:48登録)
難攻不落の要塞への進入行と云えばやはり『ナヴァロンの要塞』を思い起こさずにはいられないだろう。再びマクリーンが極寒の地にある要塞を舞台にした物語は拉致されたアメリカ高官の救出劇。
作者も『ナヴァロンの要塞』との区別をつけるために色んな特色を出している。まず物語の目的は『ナヴァロンの要塞』が巨大な砲台の破壊だったのに対し、本書は上に書いたような救出劇であり、しかも『ナヴァロンの要塞』が男ばかりのチームだったのに対し、本書は女性のメンバーも加えていることが目新しい。
さらに吹雪の中でケーブルカーの屋根に捕まって要塞に潜入したり、また同様に敵と戦かったり、さらにはバスで豪快に脱出したりとまあ、何とも映画化を意識した作りになっている。

後期のマクリーン作品は評論家によればスパイ・冒険小説と謎解きの融合が特徴であるらしく、唐突に物語が始まり、主人公の意図、目的が示されないまま、進行し、中盤以降でようやく主人公の意図が見えてくるという趣向もまたミステリの様式を汲んだものとして捉えられるが、今まで書いてきたように、個人的には成功しているように思えず、手放しで評価できなかった。
しかし本書の前に読んだ『北極基地/潜航作戦』は特にその色合いが濃く、前半は極寒の地での潜入劇、後半は潜水艦内で起きる連続殺人の犯人を突き止めるという本格ミステリのテイストが盛り込まれていた。
本書はその流れに沿うような形で、極寒の山頂に聳え立つ難攻不落の要塞への潜入劇とその任務の中で起きる仲間の不審死の謎と構造は全く以て同じと云っていいだろう。
しかしマクリーンはもう1つそこに味付けを加えている。それは読んでのお楽しみと云う事で。

ただ本書では全てがスミス少佐の掌上で展開した感があり、派手で手に汗握るアクションシーンが連続しても全てスミスの思惑が的中して、読者に一体この後どうなるのかという不安を抱かせるような構成になっていないのが玉に瑕である。例えば敵国の要塞の只中にいるにも関わらず、敵国の軍服を着ており、ドイツ語を話せるスミスは敵に見つかるたびにナチス高官を装って、煙に巻くし、ところどころで事前の仕込が全て有機的に働いて危難をスマートに切り抜ける。いうなればスミス少佐はハリウッド映画が描く超人的な体力と技能を持つスーパーヒーローなのだ。

特にハリウッドアクション映画色が濃い本書でもやはり極寒の地での潜入劇の迫真性や銃器、兵器などの専門的な知識に裏付けられた詳細な描写はマクリーンならではのリアルさに溢れている。

No.2 5点 ボナンザ
(2014/08/29 00:24登録)
アクションと知略の巡らしがずば抜けたアクション小説の傑作。
二転三転する展開は本格好きが読んでも楽しいだろう。
ただ、スミスがとっとと殺せる奴から殺しとけばもっと楽だったんじゃね?とは思う。まあ、証人としてひっぱるつもりだったんかもしれんが。

No.1 7点 isurrender
(2012/03/14 13:54登録)
解説によると、映画化を前提として書かれた作品らしく、そのめまぐるしい展開はまさに映画向き
スパイが難攻不落の要塞へどう侵入しどう脱出するのか
スリリングな展開の一方、海外作品らしいユニークな台詞が面白いです

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