悪党パーカー/人狩り 悪党パーカー |
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作家 | リチャード・スターク |
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出版日 | 1966年01月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | 雪 | |
(2019/12/05 05:25登録) 彫刻家が茶色の粘土からこねあげたような手、パサパサに乾いて水気のない茶色の髪、ごっそりそげ落ちたコンクリートのかたまりのような顔に、ひび割れした瑪瑙に似た眼がくっついている。そして、一文字にかみしめた血の気のない口元―― 非情に生まれついた犯罪者パーカーは刑務所の看守を殺して脱獄し、合衆国を横断して舞い戻ってきた。裏切った妻リンと、犯罪組織《アウトフィット》の幹部マル・レズニックに復讐するために。二人はサンフランシスコの南西海上二百マイルのところにある無人島『キーリイ島』での仕事で、南米ゲリラの総額九万三千ドルの軍需品買い付け金を強奪したのち、彼を撃ち仲間たちを殺し、邸宅に火をつけると飛行機で逃亡したのだ。シカゴでしくじり組織を放逐されたマルは、再びカムバックするための資金を欲しがっていたのだった。それに、パーカーの妻リンの身体も。 マンハッタン東六十丁目の高級アパートに住む彼女を捕らえたパーカーだったが、罪の意識に脅えたリンは睡眠薬を飲み自殺してしまう。女の死体を始末し、使いの男を締め上げてマルの行方を聞き出そうとするパーカー。焦ることはない。時間はたっぷりあるのだ。俺の手が迫るのを、ただじっとそこにすわったまま待っておけ。 だがリンの死を知ったマル・レズニックは同時にパーカーの生存に気付き、《アウトフィット》が経営するホテル『オークウッド・アームズ』に篭もろうとする。組織の男たちに守られたホテルへの、パーカーの侵入作戦が始まった。 悪党パーカーシリーズ第1作。「殺しあい」の翌年1962年の発表。「追跡」「逃走」「復讐」「挑戦」の四部構成。リンに続いてマルへの報復を遂げたパーカーは凶暴な感情を持て余し、自分の取り分四万五千ドルを渡せと、組織に直接要求し真っ向から戦いを挑みます。 一年に一回か二回、給料か銀行の武装車を襲って、リゾート地のホテルで手持ちの金が五千ドルを下まわるまでは次の仕事にかからないという生活をおくる。そんな規則正しいパターンも崩れ去り、妻に撃たれて枷が外れたのか巨大組織を相手に猛然と襲い掛かる。パーカー自身そんな自分を不思議に思うほどで、文字通り生まれ変わったと言っていいでしょう。 日本だと大藪春彦あたりに該当しますが、パーカーはサラリーマンの溜飲が下がるような無駄口は叩きません。ひたすら問答無用で行動する乾いた男。その本質が存分に現れているのがこの一作目です。 7点でもいいんですが、ほぼ同時に読んだシリーズ第14作「殺人遊園地」がもっと面白かったんで6.5点。ここまで続いて一向にダレないのは流石ですね。 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | |
(2016/09/11 12:51登録) 評者学生時代ミス研じゃなくて映研だった。大学生活最初にオールナイト行ったのが当時人気絶頂だった鈴木清順で、トリの「殺しの烙印」を見た後で先輩に「これって深夜プラス1とあと、奥さんに撃たれるあたり人狩りですね..」と言ったら、一目置いてくれたよ。ミステリ読んでおくものだね。 でまあ本作、アウトフィットという呼び方とか余計な知識が付く(苦笑)だけでなく、かつて「ハメットの後継者」って宣伝文句があったくらいの、ウェストレイクの文章のハードな良さが堪能できる。 シボレーに乗った若い男が便乗をすすめてくれたが、パーカーは、糞くらえと断った。 いきなりこれで始まる...グズグズせずにズバっと核心に切り込む文章の鋭さが素晴らしい。ノってるなあ。省くべきを省く省筆のセンスが極めて映画的である。ここらへん、私立探偵小説じゃない悪漢小説だけど、「ハードボイルド」を存分に楽しめる。 |
No.2 | 7点 | kanamori | |
(2010/05/24 00:56登録) 非情の犯罪プランナー・悪党パーカーシリーズの第1弾。 新旧シリーズ併せて20作出ている長寿シリーズの第1作は、本国出版が50年近く前というのが信じられないほど、いま読んでも新鮮な徹夜本です。 本書は妻と仲間の裏切り、刑務所脱獄、組織との戦いというパーカー自身の物語で、犯罪プランナーという側面が表れていないハードボイルドの趣が強い作品だと思います。 これを読めば、シリーズ全篇読破の欲求に駆り立てられるのは避けられません。 |
No.1 | 7点 | mini | |
(2009/01/04 11:24登録) 新年から残念なニュースだがドナルド・ウェストレイクが亡くなったらしい ウェストレイク名義のユーモア調を好む人もいるだろうが、私はシリアス調のものの方が好きなんで スターク名義の悪党パーカーはやっぱ格好良いよなあ シリーズが進むにつれてマンネリ化してしまったという評価もあるみたいだけど、この第1作はもう絶品 ドートマンダーみたいな失敗は許されないという設定のパーカーだけに作者も水準を維持するのは大変だったんだろうな |