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ミステリの祭典

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罰金
競馬シリーズ

作家 ディック・フランシス
出版日1977年01月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 5点 ことは
(2024/09/08 19:13登録)
終盤、主人公がおちいる状況は最悪。(褒め言葉です)これは嫌だなぁ。ここはヒリヒリした。
それに、知り合いが自殺する導入はよい。これは引き込まれる。
しかし、それ以外が、いまひとつ。
1つは詐欺の話だが、これがバレずにできていたというのも、どうなのかと思うし、後半の悪役の行動は、ハリウッドのアクション映画ばりのバカ行動でしょう。そんなことしたってなんにもならない。
2つめの話は、主人公のプライベートの状況だが、最初に書いたように、終盤に主人公がおちいる状況をやりたかったための設定だと思うが、時代もあるが、今読むと、主人公の恋愛観(肉欲感?)がクズ。最後の2行は特に最低。
ほかには、群像劇をやろうとしてうまくいっていないのかな? 最後のレース・シーンで、前に少し出番があった騎手がでてきたりなどして、複数のキャラの動向がレースで区切りがつくようになっているのだが、前振りが弱くて印象に残らない。
フランシス作では、どちらかというと失敗作だと思うが、MWAをとっているのが不思議だ。

No.2 7点
(2019/03/10 08:42登録)
 サンデイ・ブレイズ紙の競馬担当記者、ジェイムズ・タイローンは、人気馬ティドリイ・ポムを生産した農場主、ヴィクター・ロンシイに尋ねられた。「バート・チェコフを知ってるか?」古参の新聞記者バートは、先週泥酔して七階オフィスの窓から転落死したばかりだった。正にその日バートが、ランプライター・ゴールド・カップ・レースでティドリイを買うよう煽り立てた記事が掲載されたのだった。
 彼は転落直前、ジェイムズに忠告していた。「自分の魂を売るな・・・・・・」「やつらはまず金をくれて、後は脅迫する・・・・・・」「自分の記事を金にするな」と。
 何かある。ジェイムズは過去一年間バートが書きたてた馬が、大レースの出走を取り消し続けていることを知る。本命馬の人気をあおらせた上で出走前の賭け金を受け付けるだけ受け付けるが、その馬は走らない。払い戻しの必要は絶対にない。賭け屋が絡む詐欺だ。
 ジェイムズは裏を取り〈待て――まだティドリイ・ポムに賭けるな〉と題した記事をブレイズに載せるが、その二日後早くも彼と、容赦ない脅迫を繰り返す詐欺グループとの戦いが開始されるのだった。
 競馬シリーズ7作目にして1968年度MWA賞受賞作。タフな主人公には唯一弱みがあり、彼の妻は小児麻痺で左手と手首しか動かせない状態。呼吸も電動ポンプとスパイラシェルという機械頼みで、自力では3、4分程しか呼吸出来ません。ジェイムズは最終的に妻とティドリイ・ポムをレース出走まで守る羽目になるのですが、対する南アフリカから来た男、ヴォエルステロッドは当然、この急所を突いてきます。
 まず馬運車でのカーチェイス、続いて妻を人質に取られてからの反撃と追跡劇、最後にロールスロイス車中での死闘と、ラストは執拗なアクションの連続。脅迫され暴行を受け、強制的に酔わされながらなおも立ち上がる主人公。シリーズ中でも上位のしぶとさを見せます。こんな男は絶対相手にしたくないなあ。
 ミステリ的な捻りはあまりありませんが、混血の愛人ゲイルを筆頭に脇役もよく描けています。ストーリーの強靭さで押し切るタイプと言えるでしょう。なかなか読みでのある作品です。

No.1 8点
(2011/01/29 09:27登録)
アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。今回の語り手=主役は新聞の競馬担当記者です。弱音を吐きながらも、人気馬の出走取消にからむ不正を暴き、馬を守ろうとする彼が熱い。その主役の奥さんの設定が、本作の核になっています。この夫婦の関係、奥さんへの愛情が実にいいのです。さらにいい女、いい友人といった人物の描き方もさすがですし、終盤のサスペンス、アクションも緊迫感十分。ラスト2行だけは、なかった方がいいように思えましたが。
一方、謎解き的要素は全くないといっていいほどです。悪役については、常識の通用しないこだわりはまあいいとしても、問題は記事を書くかどうかではなく、記事が掲載されるかどうかだというあたりまえのことに気づかないらしいのでは、知的なおもしろさは最初から放棄しているということでしょう。
ところで、Forfeitという原題、確かに辞書では「罰金」の意味が最初に出てくるのですが、それでは内容に合いません。むしろ没収・剥奪の意味なのかもしれません。

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