ウェンズ氏の切り札 ウェンズ氏、マレーズ警部 |
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作家 | S=A・ステーマン |
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出版日 | 1993年05月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | ことは | |
(2020/10/18 01:04登録) うーん、これはだめだ。 併録の「ゼロ」のメインの仕掛けは、(いまでこそよくあるが)時代を考えると、実に先進的だ。仕掛けのアイディアはよい。 でも、小説としてどうなの? と思ってしまう。 (とくに「ウェンズ氏の切り札」に顕著だが)セリフとアクションだけで、描写が無い。人物描写、心理描写、風景描写が無い。また物語をすすめるエピソードも面白みがない。小説として面白くない。他のステーマン作品も、そんなイメージだったな(昔過ぎて朧な記憶ですが) ミステリとしてのアイディアはいいけど、それだけの作品。幻の……となるわけです。 ま、アイデイアはよいので、加点してこの点数かな。 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/08/07 04:11登録) (ネタバレなし) 『ウェンズ氏の切り札』 犯罪者フレデリック(フレディ)・ドローが黒幕と思われる、人身売買や麻薬犯罪、強盗事件の報道が日々の新聞を賑わしていた。そんな中、そのドローと交流のある犯罪者ジョルジュ・ダウーが頓死。当初はダウーの自殺かと思われたが、殺人の可能性が浮上する。容疑者はドローを含む4人の犯罪者たちと、そしてダウーの美しい妻のカトリーヌ(カティ)。ダウーの情婦だった娘クララ・ボナンジュの依頼を受けた名探偵「ウェンズ氏」ことヴェンセラス・ヴォロペイチクは事件の調査に乗り出すが、事態は次の惨劇へと移行していく。 『ゼロ』 「わたし」こと若手の新聞記者ミシェル・アドネは、予知能力者ムッシュー・ハッサンから、自分の周囲で近く人死にがあることを宣告された。悲劇に関連するというキーワードも告げられ、それは「サリー」という女性の名前。やがてミシェルは、老境の探検家H-J・ドナルドソンの取材に赴く。だがその取材直後に老探検家は、出立先から持ち帰った手斧にて顔を叩き割られて絶命する。そんなミシェルは惨事と前後して旧友の「シャルルカン」に再会。そのシャルルカンの現在の彼女が他ならぬドナルドソン老人の娘であり、彼女の名前がサリーだと知る。 ベルギー作家ステーマンの著作。教養文庫の日本語版は表題作である短めの長編と、中編『ゼロ』を一冊にまとめて刊行。巻末の書誌情報によると表題作は1932年の初版を経て、1959年に改稿版が出版。一方で中編『ゼロ』は1920年代の著作のようだが子細な初出年は不明。 表題作の探偵役は元ロシア貴族のウェンズ氏だが、ステーマンのもうひとりのレギュラー探偵マレーズ警部も(ほぼ)相棒として登場。マレーズ警部は中編『ゼロ』の方にも登場する。 作者があのステーマンなので何か仕掛けてくるだろうと思いながら、まず表題作を読むが、残念ながら真相は完全に予想の範疇。実はこちらはもうひとつ斜め上の下らないオチまでも予想して、いい感じにバカミスになってくれるのを期待していたが、そこまでもいかなかった。大方の人も先は読めるだろう。 教養文庫版の84ページで、映画版『殺人者は二十一番地に住む』の上映ポスターが登場するメタギャグがあるのは、ちょっと楽しい。 個人的には中編『ゼロ』の方がずっと拾いもので、ちょっとウールリッチの『夜は千の目を持つ』を思わせるようなフシギな導入部から開幕。 私的には、少なくとも後半の三つ以上のギミックの相乗で楽しませてくれた。こちらは良い意味でステーマンらしさが全開。ラストのなんともいえない余韻もなかなか良い。 ステーマンの未訳の中にはしょーもない作品も多いんだろうけれど、それでも何か楽しめるものももうちょっと残っていそうな気配もあるので(いやまったくの適当なカンだが)、またそのうち折を見て、発掘紹介してほしい作家ではある。 |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2010/06/05 18:16登録) ベルギーのエラリイ・クイーンことS=A・ステーマンの本格ミステリ、中編2作収録。 長めの中編「ウェンズ氏の切り札」は単純なトリックながら、大胆かつ巧妙な使い方に感心。伏線もていねいでなかなかの傑作だと思います。 併録の「ゼロ」は占い師の殺人予言ネタで、オカルト趣向とサスペンスに溢れている。真相もヒネリがある逸品でした。 |