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ミステリの祭典

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夜の記憶

作家 トマス・H・クック
出版日2000年05月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 レッドキング
(2022/11/30 19:03登録)
十三歳の時に、二人暮らしの姉を殺人鬼に嬲り殺されたミステリ作家。一晩中、少年の目の前で行われた言語に絶する凄惨な拷問。三十数年を経て、殺人鬼とその従者、彼らを追う探偵警官のシリーズ物を書く事で、辛うじて生きる糧と世界への繋がりを得ている中年作家。彼のおぞましい追想・・これ以上に念入りな残酷描写となったら読むの止めよか躊躇するが、綾辻行人「殺人鬼Ⅱ」みたいな悪趣味には陥ることなく筆は止まる・・に、小説内の世界と、ある過去の少女殺害事件の「探偵」仕事が重なり合って、物語は進む。メインテーマは依頼された少女殺害事件の方だが、その真相解明よりも、姉の事件の真相暴露の方が、どうしてもどぎついアクセントで心に疼く。
※痛さ・・わが「ジュン文学」同様に・・が売りのクックだが、ここまで鬱に痛いと、彼自身の生い立ちに何かあったんじゃないか?て疑いたくなる。

No.2 7点
(2022/01/22 20:39登録)
ミステリー作家である主人公が依頼を受けた50年前の少女殺害事件の真相の調査と、主人公の悲しい過去とが交錯しながら話が進む、陰鬱だけど、わくわくしながら読める物語だった。

素人探偵の捜査は聞き取り中心で意外に古典的。しかも女性の相棒付き。
もしかしてオーソドックスな本格推理物かと思いきや、ラストはこうきたか、という感じ。
こういう結末は予想外だったが冷静に考えれば、クックらしいとも言えるし、悪くはなかったどころか、むしろ好みだったのかも。
ただ、主人公の過去の挿入が多すぎて匂いすぎるのは欠点かな、いや長所なのかな。

本書はタイトルから、過去に読んだような気がしていたが、内容に全く覚えがなかった。気のせいだったようだ。

No.1 7点
(2016/03/21 23:24登録)
今まで読んだクックの日本語タイトルでは「記憶」が付いた3作(死・夜・沼地)の中では、その構成が最も率直にいいと思えた作品です。技巧派好きな人なら『沼地の記憶』を挙げるかもしれませんが。
主役は時代物ミステリ作家で、登場人物表の中にはなんと彼が書いた作中登場人物の名前まで出てきます。50年前に起こった事件の再調査を彼が依頼され、さらに彼自身の子どもの頃の残酷な事件の記憶とからまりながら話が進んでいき、それに漠然とした形ではありますが作中作まで混ざり合ってくる構成は、「記憶」というかひたすら暗い「過去」への徹底的なこだわりを感じさせます。
少しずつ明かされていく彼自身の過去の事件の隠匿部分はすぐ想像がつきますし、依頼される事件も特に驚くような結末ではないのですが、説得力はあります。重々しいじっくり型作品にもかかわらず、意外に読みやすいのも評価できます。

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