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ミステリの祭典

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通り魔
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1960年01月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2024/12/04 14:23登録)
87の2作目。「警官嫌い」でまだパトロール警官のクリング君が負傷する件から引き続く。キャレラは晴れてご成婚。この事件中は新婚旅行で最後の場面に顔を出すだけ。マイヤー・マイヤーは初登場だけど、ずっと87に居たような顔をしている。ハヴィランドとウィリスに出番が多い。

特筆はやはりクリング君。この話があの気の毒なクレアとの馴れ初め回。プライベートな関りで、私的に捜査してその中でクレアと出会って、イイ感じでデートもしちゃったりする。そして見事ラストでは刑事への昇進をキメてみせる。青春、だなあ。
メインは「クリフォードはお礼をもうします、マダム」とご挨拶な女性を専門に狙う強盗の話と、その犯行に見せかけた女性殺しの話。女性刑事アイリーン・バークが囮を買って出るエピソードあり。クレアとアイリーン、同じ作品で初登場するというのが面白い。マイヤー・マイヤーは連続猫盗難事件というジョークみたいな話の担当。

いやいや、結構とりとめがない...というか、シリーズ2作目なのに「肩の力が抜けすぎている」のが何か不思議。狙ってやったのなら、作者のヨミが深すぎるのかもしれない。

No.2 6点 斎藤警部
(2015/06/17 05:10登録)
カート・キャノンは少し読んだけど、エドさんの87分署は初体験。
以前同じ勤め先にいた、敬服しちまう程エンタメ通の奴が「ハチヒチは面白い!」と言ってたんで(いえ本当はそんな言い方してませんが)ちょいと気になって50円の古本で買ったのがかれこれ15年近くも前。ずいぶん長らくお待たせしちまって恐縮もいい所だ。50円で売ってたその店はもう無い。

んで、だいたい予想通りに良かったです。もう何冊も読んでみたい、出来ればシリーズ全巻読破してやりてえ(再読はしまいが?)、って気にちょっとさせられたねえ。  
で良い所もいっぱいだが粗もなかなか目立つ。文体も島田一男っぽくサバケてみたかと思うと次の瞬間そこにフィリップ・マーロウが来たのかと思うほど気取ってみたり。だけど大都会、特にその荒っぽい地域の情景がありありと浮かんで来る文章は流石ですね。
数年前に空さんも指摘されてた通り、事件性のあるサブストーリーが本筋と絡まずさようなら、という構図は気になります。まさかそのサブ事件が数年先の作品にメインとしてひょいと再登場したりしてないだろうな?(そういや昔のTubeに「10年先のラブストーリー」ってカラオケ映えするナンバーがあった)

まシリーズでいっぱい続くわけだから、こんくらいの緩さがジャストフィットなのかも知れません。とにかく、また読みたくなりました。 今度はキャレラって奴が主役のをちょいと見てみたい。本作で奴が最後に新婚旅行から帰ってきたシーンは何故だか涙が出るほど感動しちまった。。 そんな所だ。

No.1 5点
(2010/04/10 12:43登録)
フレデリック・ダネイは来日した時、マクベインの小説作法に対して、1つの長編の中でいくつかの話を並行して書いて、各々別の結末をつける安易な構成だと批判的な意見だったそうですが、本作を読むとなるほどと思えます。
たとえば別の分署で起こった猫の連続盗難事件の話のオチは、バカミスと言うかボケミスと言うか、個人的には笑えました。しかしその事件をなぜ本作の中で語るのかと言えば、大都会ではそんな事件も起こるから付け加えたのだ、というだけでしょう。メイン・ストーリーにからんでこないのです。訳者あとがきでは寄せ鍋という言葉が使われていましたが、むしろさまざまな小料理の取り合わせという感じがします。その中で気に入ったのはクリング巡査の恋愛話でした。
文章はところどころでしゃれた表現を連ねているのですが、チャンドラーやアイリッシュのように文章が雰囲気を決定づけるという感じではなく、ただ気取っているだけに思えるのが難点です。

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