レスター・リースの冒険 怪盗レスター・リース/ポケミスは6編、同じ書名の文庫は4編収録 うち2編が同一 |
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作家 | E・S・ガードナー |
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出版日 | 1956年01月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2024/04/03 19:44登録) そういえば本サイトでは評者初ガードナー。 昔は読んでいて、嫌いと言うほどでもないのだが、思い入れがないので、何となくやるタイミングをなくしていた。搦め手かもしれないが、レスター・リースから始めるか。 警察のスパイで従僕に化けているスカットルが読む新聞記事から、犯罪事件の犯人を推理して、その獲物を横取りする怪盗レスター・リースが主人公。中編4本のハヤカワ文庫。 新聞記事からだけで真相を推理するわけだから、安楽椅子探偵の一種だし、真犯人から獲物をかっさらうのはコンゲームみたいな趣向。そして、ヤラれ役のスカットルと上司のアクリー部長刑事に「ブラック魔王とケンケン」みたいなカラーがあって、エンタメの趣向としては満点。 リースの推理の部分がわりと面白い。ちょっとした手がかりから真相を膨らませてみせるのがなかなか見事。コンゲームの部分は「カトゥーン的」といった感覚。チューインガム中毒なナイスバディ秘書とかさ、結構笑える。 欠点はリースの狙いが真犯人への陽動作戦ベースで、さらにスカットルに狙いを見抜かせないオトボケがあるために、リースの狙いが全然読めなくて置いてけぼりになりやすい。さらにいろいろ詰め込み過ぎて展開が早すぎること。あれよあれよと話が進行してあっけにとられるのが、SFみたいな読み心地。 ガチャガチャした雰囲気なのが、パルプマガジンの駄菓子感覚というものだ。 |
No.3 | 7点 | 弾十六 | |
(2018/11/18 11:03登録) 文庫版で読了。 なぜレスター リースはほんの数作しか翻訳されないのか? 答えは簡単でテキストが手に入らないから。ガードナーの短編集に収録された2作、Ellery Queen編の単行本The Bird in the Hand and Four Other Stories(1969)及びThe Amazing Adventures of Lester Leith(1980)収録の7作以外はパルプマガジンを漁るしかありません。(EQMM採録作で未翻訳のものがあるのかなあ…) FictionMags Indexという素晴らしいHPで調べるとレスター リースものは全部で65作。Detective Story誌に掲載された7作以外は全てDetective Fiction Weekly誌(以下D.F.W.)及びその後継誌に掲載されました。(ヒューズのガードナー伝付属の全作品リストでD.F.W.1929年夏頃?と記載していたA Sock on the Jawは存在せず、逆に全作品リストに漏れている1作 Vanishing Shadows, D.F.W. 1930-2-8 をFictionMags Indexで見つけました。このHPでは各号の表紙の画像を掲載していて、リースものは人気が高く大抵カヴァーストーリーになっているので当時のリースのイメージがわかります) 私はレスター大好きなのですが、本国での人気が高まるのを待つしかありませんね… (あと56作も楽しみが残ってる!と思うことにしましょう) 怪盗サムでお馴染みの大正ボーイ乾先生の翻訳も快調。いずれも楽しい紳士怪盗ものです。 今回収録されてるのは以下の4作(#はリースものの雑誌掲載順通し番号です) #23 The Candy Kid (D.F.W., March 14, 1931) #64 Something Like a Pelican (Flynn's Detective Fiction, January 1943) [aka Lester Leith, Financier] #51 The Monkey Murder (Detective Story, January 1939) #58 A Thousand to One (D.F.W., October 28, 1939) [aka Lester Leith, Impersonator] (2023-4-22追記) アマゾンで探したら、グーテンベルク21に妹尾訳『レスター・リースの冒険』があることに気づいたので(以前は翻訳の問題でパスしていました…)文庫版未収録の1篇のためにポチりました。収録内容、訳者あとがきから判断してグーテンベルク21版は早川HPBと同一であることはほぼ確実です。(ここまで慎重になる必要ある?「ほぼ」は不要ですね) 訳者あとがきに興味深い文章がありました。 (…)レスター・リースのシリーズは、二十年ほどまえにアメリカの雑誌にのっただけで、まだ単行本にはなっていない。この本におさめた六編のうち、五編までは、最近クイーンマガジンに再録されたのを訳したのである。 (…) この六編のうち、「いたずらな七つの帽子」だけは、ディテクティヴ・ストーリーといういま廃刊になっている雑誌の、一九三九年二月号からとった。私はいまこの雑誌を探しているがこれ一冊しかもっていない。(…) 単行本出版時には、もう雑誌が行方不明になってたみたい。妹尾さんは1962年(70歳)お亡くなりになっています。蔵書はどうなったのかなあ… 最初の二篇を読みましたが、翻訳はやっぱり怪しげ(口調は良く、日本語にはなっていますが、意味が良くわからないところがちょっと多めにあるのです)。 でもレスター・リース楽しいなあ。筋はすっかり忘れていて、本当に既読物件なの?と思うくらい。人並由真さまのおっしゃる通り、ESGのスピーディーな中篇は現代でも十分通じると思います!(とは言うものの、中篇集の売れ行きは長篇と比べると悪そうだと勝手に感じているので、出版側とすれば二の足を踏むのではないか、とも思ってしまいます…) 文庫本と収録内容を比較後、人並由真さまからご指示のあったHPBと文庫版との異同の詳細を追記します。そして「いたずらな七つの帽子」はネットで原文を入手済なので、読後、妹尾訳の実態を分析(という大袈裟なものではない)したいと思っています… |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2010/10/18 18:13登録) 怪盗レスター・リースもの中編4編収録のシリーズ第1弾。 まず、リースに仕える従僕で警察のスパイでもあるスカットルがいい。リースには手玉にとられ、本来の上司アクリー部長刑事には手柄を横取りされたり、失敗の責任転嫁を受ける苛められキャラで、ある意味このシチュエーション・コメデイの主役といえます。 ミステリ的には、新聞記事から事件の真相を見抜く安楽椅子探偵ものであり、真犯人からどのように物品を横取りするかというハウダニット趣向もミスリードと伏線が充実していて楽しめました。 |
No.1 | 8点 | mini | |
(2008/11/29 10:06登録) どうも日本の読者には、どれも平均以上で作品ごとに出来不出来の少ない職人肌の作家は好まれない傾向があるが、職人肌の作家ガードナーの職人芸が堪能出来るのが怪盗レスター・リースなのである まだペリー・メイスンものを書き出す以前に、パルプ雑誌に短中編を書きまくっていた時期があるが、その頃の代表的中編シリーズで総数も結構多い 義賊リースは召使のスカットルから面白そうな新聞の犯罪記事を聞き、すぐさま真相を看破して作戦を立て、犯罪者から金品などの獲物を横取りしてしまうのが基本ストーリー 実は召使スカットルは警察側のスパイで、警察ではリースのしっぽを捕まえようとしていたわけだが、リースもスカットルの正体は承知の上で知らない振りをしている そしてリースはスカットルに作戦に必要な数点の買い物をさせるのだが、当然スカットルは警察本部に報告する ところが買い物のアイテムだが、例えばキャンデーと半田ごてなど組み合わせが奇妙で、警察側は検討すれどアイテムの使い途がさっぱり分からない 結局リースがまんまと警察側を出し抜いて犯罪者は警察に引き渡す代わりに金品はリースの懐に、というのがお決まりのパターンだ いかにもパルプ雑誌向けのB級エンターテイメントだが、B級にも一流と二流があり、一流のB級小説というのはこういうのを言うのだろう |