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ミステリの祭典

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偽証するおうむ
ペリイ・メイスン 別題『偽証する鸚鵡』『偽証するオウム』

作家 E・S・ガードナー
出版日1958年01月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 8点 弾十六
(2018/11/17 07:45登録)
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第14話。1939年2月出版。電子本(グーテンベルク21)で読了。
9月12日月曜日(1938年が該当)から物語は始まります。冒頭はいつもの事務所ですが、殺人事件発生後にメイスンが依頼を受けるのはシリーズ初。「ホーカム」巡査部長(「わが20年の警察生活」原文は単にin twenty years)は、いつもお馴染みのホルコムですが、ここでは「ニューヨーク検察本部」の殺人班所属と訳され、メイスンに対するセリフもちょっと丁寧です。原文はSergeant Holcomb of the Metropolitan Police 宇野先生は本書の別の箇所でロスアンジェルスと補って訳してる(原文the city)のに、なぜMetropolitan=New York? なお原文にLos Angelesは一度も出てません。
いまは失業も珍しいことではない、という時代、登場人物が不況論を語ります。「ついこの間の保険代理業者殺人事件」は「カナリヤの爪」のこと。小鳥屋ヘルモンドは2度目の登場。電話の盗聴には大掛かりな仕掛けが必要です。(ポータブル録音機がポピュラーになるのはまだ先の話、本作はデラが速記する時代です。)
メイスン探偵の冒険はいつもの通り二転三転、圧倒的に不利な証言をどうするのか、が見もの。結末はとても鮮やかです。
銃は図書館収蔵の「41ミリ口径」(原文A forty-one. 迫撃砲じゃないんですから… 正解は.41インチ)デリンジャー式ピストルが登場。短い銃身が2本並んで双方から発射出来る、とあるので有名なRemington Double Derringer(1860年代からの生産)でしょうね。「仕込み銃の一種で畳み込むと小さくなる」(評者注: 折りたたみ式の銃ではない)とか「弾丸2発は同時に発射された」(評者注: 銃のバレルは2本ありますが1本ずつ代わり番こに発射する構造)という変な箇所があります。原文を見ると仕込み銃はtrick weapon(隠し武器、くらいの感じ?)、畳み込むのはOne of those short-barrelled guns, with a trigger which folds back out of the way. It’s small enough to be carried anywhere. 試訳「短銃身の銃で引き金が引っ込むやつ、小さくて何処にでも持ち込める」、弾丸2発同時はboth barrels of the gun had been fired at once. 続けざま、というニュアンスでしょうか。

No.2 6点 nukkam
(2016/09/15 17:48登録)
(ネタバレなしです) 法廷で自説を絶対に曲げないような頑固証人をいかにして正しい方向へ誘導するのか、この難題を1939年発表のペリイ・メイスンシリーズ第14作である本書でメイスンが実に見事な手腕で処理します。最後のメロドラマが唐突でご都合主義的な感じもしますが謎解きとしてはよくできていると思います。

No.1 7点
(2013/11/29 22:14登録)
ペリー・メイスン・シリーズの中でもおもしろかったと記憶していた作品ですが、今回再読してみると、冒頭部分から少々驚かされました。例によって依頼人の登場から始まるわけですが、本作ではすでにメインの殺人事件が新聞記事に載っていて、しかも依頼人はその容疑者と目されているわけではないという状況なのです。そして依頼人は、警察には言っていないが殺人現場にいたおうむは被害者が飼っていたものではないと主張します。
殺人事件についての手がかりはそのおうむを始め豊富で、真相は単純ながら鮮やかですし、真犯人判明後にもう一つ意外で爽やかな結末を用意しています。実はこの最後の意外性は検死法廷の1~2日後には警察にも知られるはずで、そうなるとメイスンの犯人指摘推理も必要なくなるだろうというところはありますが、欠点というほどでもないでしょう。短い作品ですがきれいにまとまった秀作だと思います。

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