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ミステリの祭典

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恐怖の冥路

作家 コーネル・ウールリッチ
出版日1950年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 8点 クリスティ再読
(2024/06/25 11:02登録)
ウールリッチの場合、パルピィなスピード感と詠嘆の間でのバランスがホントに大事なことなんだと感じてる。黒シリーズ最後(ちょっと時間を置いて書かれてもいる)の「喪服のランデブー」だと詠嘆が勝り過ぎて、それが鬱陶しいという逆効果に思えたのだけど、その前の黒シリーズを連打していた時期の最終作にあたる本作、このバランス感が一番いい作品だとも思う。

スピード感だけだと安っぽいし、詠嘆だけだと話が止まってしまって鬱屈の中で立ち往生してしまう....だからこのさじ加減が本当に大事なのだけど、なかなかウールリッチ自身でもこのバランスをうまく実現できた例は少ないようにも感じるんだ。人妻との逃避行とその愛する女を殺された容疑が自分にかかった男。ハバナの貧民街での逃走劇。男は冤罪を晴らすべく証拠を探す...そして甘美なる復讐。

いやいや、ウールリッチのフルコースじゃないのかな。そして主人公をサポートするこの貧民街の「葉巻娘」メディア・ノーチェ。警察を恨む豪快な女傑っぷりがナイス。でも事実上警察に殺された男のために「墓場の花」という譬えを使って、主人公の喪失感にも寄り添うし、また別れっぷりも見事。ちょっとシビれるような情感があるなあ。

そして、やはり主人公が愛する女が殺されるシーンが素晴らしい。ぐっと作中世界に引き込まれる素晴らしいツカミ。

スコッティ、あたしに代わって、あたしの飲物を飲んでちょうだい。まだ、その上に残っているはずだから。そして、グラスを床に投げつけて割ってちょうだい。あたしの門出を祝って。

確かにこれはリアルとは対極の描写には違いない。しかしこの作為にウールリッチのロマンが燃焼する。

No.2 6点 ロビン
(2009/05/03 00:47登録)
まあ、取るに足らない平均的なアイリッシュ作品。プロットも目新しい点はないし、設定自体もよく使う手法です。導入部の謎は確かに『幻の女』を彷彿とさせられるが、それに比べたらかなり小粒な謎。
ただ、読ませる展開や詩的な描写は相も変わらず素敵。久しぶりにアイリッシュ節を堪能できたのは嬉しかった。

No.1 4点 Tetchy
(2008/10/22 20:28登録)
ウールリッチ作品にしてはかなり落ちる作品。
何となく導入部も『幻の女』を思わせるし、なんだか二番煎じのような感じだ。
最初に手に取るウールリッチ作品としてならば、及第点であろうが、それなりに読んできた身ならば、物足りなさと書き流した感が否めない作品だ。

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