高い砦 |
---|
作家 | デズモンド・バグリイ |
---|---|
出版日 | 1980年02月 |
平均点 | 7.80点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2021/03/29 18:02登録) (東西ミステリーベスト91位)死のアンデス越え(雪山)は迫力がありました。登場人物でのお気に入りは女性教師のポンスキイ(50代)。手作りの弓で最初に敵を殺さなければならない彼女の心情がよく伝わってきました。後に負傷し活躍の場面がなかったのは残念。 (ネタバレあり) しかし、ラストで著者の憎いフォローがあったので、ついホロリ???(笑)。仲間の歴史学者が「わしは袖をめくり、傷を見せこうも言おう・・・いかなる手柄をその日にたてたか・・・生き残ったわしら、数少ない者が・・・」(シェークスピア)と大きな声で朗唱。「ポンスキイが学校に戻ったら、(生徒にシェークスピアを教える時)彼女が袖をまくって、傷をみせると思われますか?」と彼女のことに触れています。影の主役でしたね。なお、「男の中に熱い血が流れる限り不可能ということはない」というセリフは冒険小説の金言らしい。 |
No.4 | 8点 | 斎藤警部 | |
(2020/08/14 00:25登録) アンデス急峻の小さな滑走路へ墜ちるように不時着したハイジャック機。 生存者の中には南米某国を追われた元大統領がいる。 諸々の悪条件をかわして万年雪の中を移動しサヴァイヴしようとする生存者たちは山中の「砦」に滞在中、下方に陣を取っていた謎の軍勢から攻撃を受け始める。 軍勢は彼我を隔てる峡谷激流に橋を架け一気に「砦」側への攻勢を掛けんとするが。。。。 “大きな羽根ぶとんのベッドにゆったりと嬉しくも沈みこんで眠っているのだ。ベッドは柔らかく優しくかれをつつみ、疲れきった体を支えると同時に沈んでいくように思えた。かれとベッドの両方がゆっくりと大きな裂け目の中を落下しており、下へ下へと舞いおりており、とつぜんかれは恐怖とともに、これは死の安らぎなのだ、穴の底に達したときに死ぬのだと気づいた。“ 雪山の中ただ移動すりゃいいってもんじゃなく、高山病を避けるため分隊で工夫し高度変化に慣れながら歩行、まともな登山道具など無い、もちろん軍勢を避け、時に激しく退けながら(この手造り武器が凄い!)、某国軍も一枚岩ではない(これが事を複雑にする)、ある者は体調が悪かったり大怪我をしていたり、割り切って見ればパズルの様でもあるその移動劇は全て極寒大自然の中。 こりゃあ真夏に読みたい。 「ちょっとやってみたかったんでね」 懸念される政治環境の風化は、元々そこマジで書いてないから心配ご無用、というのは真っ赤な戯言で、軟派コミュニストに限らず人々の不満不安カクテルにつけ込んでうまいことやるセクシークソ野郎共一般を敵として指弾しているのだから古くなりようがない。 冒頭から中盤からいっときも緊張の途切れないストーリーと細部描写だが、何より最後、絶体絶命の味方側が二手、いや協力者を入れて三手に分かれてのちょっと危うい複雑な生存への立体闘争パノラマは、、、心理的盛り上げがあっさりしたままにサドゥンエンドを迎えるにしても、、、最高の臨場感!!! 理系、文系、まとめ役、経験者、知見者、冒険者、政界アイコン。。 突出したヒーローに主役や裏主役を任せなくとも生まれる有機的チーム感。 豪快にドライヴするご都合主義(!!!)は最高にエンタテインメントの役に立つ!! ! 「射程が決まったようだな」 「そのまま続けてくれよ」 何気にラテンの人たちをディスってる感はある。ロシア人だけは敵ながら立派、って。。 まいっか(??) 【こっからネタバレ】 あの人が裏切ったとか、スパイだったとか、偽者だったとか、意外な人間関係が明かさるとか、そういうのいっさい無いんだけど、まーーー、気になりまへんわ! |
No.3 | 6点 | kanamori | |
(2010/07/18 18:01登録) 正統派の冒険小説。 山中に墜落した飛行機の生き残りの乗客と、ある武闘集団の戦いを描いているだけですが、いわば素人集団VSプロ集団という構図が面白い。乗客側の専門分野を駆使した反撃、とくに古代の投石機を再現した武器などが印象に残っています。 |
No.2 | 10点 | こう | |
(2008/12/23 23:55登録) 冒険小説のお手本と個人的には思います。これを読んだ高校生の頃はまだこの作品以外も普通に書店にありましたので「マッキントッシュの男」くらいまで読みましたがいずれも面白かった覚えがあります。 ハイジャックされた飛行機のパイロットが主人公でアンデス山中に強行着陸する犯人と乗客の一部が死亡、残った10人が救助を求めて下山するが乗客の中に元大統領がいたことが判明、彼と一緒に乗客全員をまとめて殺すために謎の一団が襲撃してきた。生き残りをかけて乗客たちが手元の材料から武器を作り上げ反撃して、というストーリーで乗客たちの職業、キャリアを生かしており非常に面白かったです。 「アカ嫌い」が全面に出ているのは時代性からやむを得ないですがはじめはバラバラの他人である10人が一丸となって敵にあたり(相手は共産主義)最後に勝利するという冒険小説のお手本と言える内容でしょう。 初期作はいずれも面白かったですが個人的にはやはり高い砦が一番だった覚えがあります。今ではこの作品くらいしか簡単に手に入らない様ですが冒険小説好きの方ならこの作品だけでも手に取る価値はあるかと思います。 |
No.1 | 7点 | ElderMizuho | |
(2008/09/09 21:36登録) ミステリ・・ではないと思うが読み物として最高級の一品 冒頭から脳汁出まくりのサバイバルアクション ストーリーの都合に設定が合わせられ過ぎな面は否めないが、その分全編にわたり読み応えのある展開となっている ラストの評判が芳しくないようだけど自分はむしろこの小説からすれば自然な流れに思えた。 |