原罪 アダム・ダルグリッシュ |
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作家 | P・D・ジェイムズ |
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出版日 | 1995年12月 |
平均点 | 6.67点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 7点 | ことは | |
(2021/03/14 15:11登録) ミスキン警部を追いかけようと(登場人物一覧にミスキン警部がない「策謀と欲望」はとばして)原罪に手をだしてみた。 読んてみると「死の味」に対する言及も複数箇所あり、本作でミスキン警部が最初に出るシーンは「死の味」の直後の感じが濃厚にあり、シリーズ的には、完全に「死の味」の次作となっているように思える。 「死の味」以前の作品は「罪なき血」以外は読んでいるが、今まで読んだジェイムズ作品では、「死の味」よりさらに読みやすく、間違いなく一番面白かった。 今回、出版社が舞台ということで(家族関係が主になっていなく)、事件関係者視点の部分もいろいろな動機が蠢くミステリとして読める。これまでのジェイムズ作品では、一番文学味を感じなかった。今回6割ほどが事件関係者視点なのに、一番ミステリだと思った。 キャラクター描写も冴えていて、アリバイを証言する子供(人物表にない)などは、頭がよい、かつ、子供であることを両立させていて、実に魅力的。 ラストもなかなか意外。途中のあのエピソードがフィーチャーされるとは。ミステリ的カタルシスは無い意外性であるところは、やはりジェイムズだなぁと思うけど。 ラストシーンは、ダルグリッシュよりもミスキンに寄った描写になっていて、ここも個人的には好感触。作者はミスキンの方に心情的に寄り添っていそうで、次回以降もミスキンの活躍が期待できそうだ。 いやいや、これは、今後のダルグリッシュ&ミスキンものも楽しみだ。 |
No.2 | 5点 | nukkam | |
(2016/09/29 23:17登録) (ネタバレなしです) 1994年発表のダルグリッシュシリーズ第10作で、ハヤカワ文庫版で上下巻合わせて700ページ超えの大作です(本書で3作連続上下巻出版です)。フーダニットよりもホワイダニットとしての印象が強く残った作品です。被害者の嫌らしさは殺される前から丹念に描かれているので殺される理由には事欠かないと思って読みましたが、真相を知って動機の奥深さに印象づけられました。謎解きに関しては前の2作よりも推理要素があり、伝統的な本格派ミステりー路線へ回帰しつつあるのかなと個人的な期待を抱かせました。それでもこのボリュームにはてこずりましたが。 |
No.1 | 8点 | Tetchy | |
(2009/02/03 21:57登録) マンディ・プライスという従来の作者の作品にはいなかった現代的な娘を要所要所に活用する事で、何か軽快なテンポのいいストーリー展開が生まれ、非常に愉しく読み進めることが出来た。 とは云え、改行の少ない文字のぎっしり詰まった文章は相変わらずだし、最後の最後に来て救済のない結末を持ってくる所などは、ああ、やはりP.D.ジェイムズか、と嘆息してしまった。しかし、ある種吹っ切れた感があるのは確か。 やはり今回のように出版業界のような勝手知ったる世界を舞台に扱う方が俄然物語に勢いがついてくる。 |