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ミステリの祭典

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ぼくらの世界
栗本薫

作家 栗本薫
出版日1984年10月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 6点 虫暮部
(2024/06/07 13:18登録)
 私は、全てをメタ化しかねない “狂言芝居” は本格原理主義者にとって寧ろ鬼門じゃないかと思うのだ(→探偵役がマッチポンプではない証明が出来ない)。だから全ての始まり、あの人がああいう計画を立てた、と言うことがどうも腑に落ちない。
 “ぼくら” のモラトリアムの終わりに、人の “業” の事件を重ね合わせたのも、ちょっとズレている気がする。確かに薫くんは当事者だけど、信とヤスは時系列的に重複するだけの別エピソードって感じで、エピローグが浮いてるじゃないか。

 ところで、冒頭でミステリ6作のネタバレ予告をしているが、本当に問題なのは筒井康隆『大いなる助走』である。結末の展開をバラしてるんだもん。

No.2 4点 nukkam
(2017/09/23 23:36登録)
(ネタバレなしです) 1984年発表の「ぼくらの」三部作の最終作となった本格派推理小説です。「ぼくらの気持」(1979年)から5年の空白がありますが主人公の栗本薫の登場するシリーズ作品としてはこの間に秘境冒険小説の「魔境遊撃隊」(1984年)があります。軽妙な雰囲気の本格派という点では他の三部作作品と共通してはいますが主人公の栗本薫以外の2人の仲間、石森信と加藤泰彦がほとんど目立たずこれでは「ぼくらの世界」というより「ぼくの世界」ではないでしょうか。そして過去2作品にみなぎっていた情熱のようなものが失われているのも残念です。エラリー・クイーン作品のネタバレを謎解きに絡めているのも読者の評価が分かれそうに思います。

No.1 5点 kanamori
(2014/04/09 18:29登録)
”ぼく”こと栗本薫が書いた推理小説「ぼくらの時代」がミステリ作家の登竜門であるホームズ賞を貰うことになった。ところが、その授賞式会場のホテルのトイレで、担当編集者の裸の死体が発見される事件が起きて-------。

”ぼくら”3部作の完結編。第1作のテレビ業界、第2作の少女マンガ出版業界につづいて、今回は推理小説文壇を背景にした謎解きミステリになっている。
裸にされた死体(「スペイン岬の秘密」)、「XY」のダイイングメッセージ(「緋文字」)、凶器のマンドリンなどなど、エラリー・クイーン作品の見立て殺人という趣向が興味を惹きましたが、真相はちょっと腰砕けの感がある。また、(いくら冒頭に警告があるとはいえ)それらのクイーン作品をそこまで突っ込んでネタバラシする必要があったのか疑問に思わなくもありません。
ただ、大学時代のバンド仲間、信とヤスヒコが集うラストシーンは感慨深いものがありました。

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