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ミステリの祭典

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現代夜討曽我
墨野隴人シリーズ

作家 高木彬光
出版日1987年06月
平均点4.67点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2023/05/22 13:11登録)
(ネタバレなしです) 病気療養による空白期からの復活作としては神津恭介シリーズ第14作の「古代天皇の秘密」(1986年)に次ぐ1987年発表の本格派推理小説で、墨野隴人シリーズとしては第3作の「大東京四谷怪談」(1976年)以来となります。本書の光文社ノベルス版で作者は本書と次作の二作をもって完結、終了の予定と宣言しており、作家としての執念と幕引きの意識を表明しています。日本三大仇討ちの一つである、800年前の曽我兄弟の仇討ち事件への復讐を示唆する怪文書が発端となる事件ですが、現代に登場する曽我兄弟と800年前の曽我兄弟に血のつながりがないためか見立てとしては中途半端だし、サスペンスも不足しています。中盤で曽我兄弟物語の概要を紹介しているのは親切な読者サービスですが。墨野は「殺人というような大仕事をした以上、それと釣り合いのとれるようなことがなければ、おかしい」と動機を重視していますが、手段や機会については証拠らしいものがなく「想像に頼る以外にはありません」と粗い推理で、ワトソン役の村田和子が絶賛するほど「あまりにも明快な解説」とは感じませんでした。すっきりしない幕切れも読者の好き嫌いが分かれそうです。

No.2 4点 クリスティ再読
(2022/04/09 10:06登録)
さて、墨野隴人4作目。なんだけども、前作「大東京四谷怪談」が1976年作品で本作が1987年。間が11年も空いているのは、言うまでもなく作者が脳梗塞で倒れてリハビリに苦闘したことがあるためである。
なんだけども....いや、出来はよくない。曽我兄弟の仇討を連想させるような「見立て」があるんだけども、いわゆる「見立て殺人」というほどでもないし、狙いが散漫で、謎にも真相にも魅力が薄い。何か義務的に書いているような印象さえ感じる...
1969年の世相がいろいろ描写されていて、結構評者は懐かしい。アポロの月着陸、大学紛争、大阪万博...墨野が「国際化の時代」とか宣う。いやそうなんだけどもね。


(ネタバレごめん)
実は作者病気で長期中断した件が、作者のシリーズの狙いに悪影響を及ぼしてもいる。このシリーズ全体が比較的短期間に起きた事件でないと、最終的な辻褄が合わないので、わざわざ出版から18年も前の「1969年の事件」を強調することになったのだろう。シリーズ伏線で「張り残した」要素があるから、オチである次作「仮面よ、さらば」のために、わざわざ1作品挟む必要がある、との判断ではないか。作者の気力・体力以上に、「シリーズ構成で必要」だからで無理して書いた作品のように感じる....

執念、といえばそうかもしれないが、急いで書いたような「薄さ」の方が目立つ。悲しいし、残念。

No.1 5点 vivi
(2008/05/22 01:04登録)
墨野隴人シリーズの第4弾。
これだけ出版社が違って、集めるときに嫌だったですが。

歌舞伎でも有名らしい、曽我兄弟の仇討ち劇が題材ですが、
勉強不足にて知りません(^^;
でも、作中にはちゃんと解説がされているので、大丈夫でした。

作品自体は、新事実の判明でどんどん進んでいく感じで、
ちょっと物足りないところもあるのですが、
これは墨野隴人シリーズを読む上では欠かせない話ではあります。

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