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ミステリの祭典

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ドーヴァー1
ドーヴァーシリーズ

作家 ジョイス・ポーター
出版日1986年06月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 クリスティ再読
(2023/07/16 20:45登録)
ポーターもやらなきゃ。というわけでシリーズは最初から読もうか。
「世界の名探偵50人」とかその手の本でも「ドーヴァー警部」は大概最後の方で「迷探偵」枠みたいにして紹介されるわけだけど、いや本サイトでもよく指摘されるように、実はパズラーの骨格があるために意外に推理が当たるんだよね。でも性格は実にお下劣で絵に描いたような嫌なやつ。本作でも最後は真犯人に拷問まがいのことまでするくらい。

でまあなかなか奇抜な動機などで有名な本作、言ってみれば「バカミス」なんだけども、そういう声はほとんどない。これが面白いところで、やはり「作者が狙って書いたブラックな真相」というのは、「バカミス」にはならないわけだ。言ってみれば「バカなことで成功している」わけ。
だから逆に言えば、作者がこの「バカさ」によって際立てたかったこと、というのも気になる。実はそれ、本作で縦横無尽に描かれる「強〜い女性たち」の群像なのではないのだろうか。オトコたちは情けない。しかし、女性陸軍大佐やら女性探検家、あるいはイカツい婦人警官、100キロ超のマシュマロ女子でありながら、奔放なsexをエンジョイする被害者...こういう「濃い女性たち」の暴れっぷりこそが、この本の隠れた生命線なのでは?なんて思う。
逆に嫌われ者ドーヴァー警部の造形というのも、「オトコの嫌な面」を誇張して造形した、という見方もできるんだろう。だからフェミ小説的な読み方がガチでできる小説。

No.3 6点 人並由真
(2023/05/19 09:34登録)
(ネタバレなし)
 英国のクリードン地方で、18歳のメイド、ジュリエット・ラッグが姿を消した。事件性を感じた現地の警察署長バートレットは、前任者がかつて殺人事件の捜査でミスを起こし、引退するまでその汚名が付いて回ったのを気にし、面識のあるスコットランドヤードの副総監に連絡。応援を求めた。かくして送られてきたのは、何かと悪評の高い警視庁主任警部ウィルフレッド・ドーヴァーと、その部下で有能な美青年の部長刑事チャールズ・エドワード・マクレガーだった。二人は現地の関係者の聞き込みに回るが、やがて男性関係に奔放だったジュリエットの素顔が見えてくる。そして事態は更なる展開を見せた。

 1964年の英国作品。ドーヴァーシリーズの第一弾。
 
 自宅内からウン十年前に一度読んだきりのポケミスが出てきて、細部を全く忘れてるので、興味が湧いて再読する。

 とはいえ印象的な大ネタだけはさすがに覚えており、そこから類推しながら読み進めると、忘れていた終盤の展開とか、そのほかも、何となく思い出してしまった(なるべくネタバレにならないよう、配慮しております・汗)。

 しかし再読して思ったのは、本作ではまだそれほど、ドーヴァーがアンチ名探偵ではないこと、そして話のテンポが非常にいいこと、の二つ。
 ポーターがやりたかったのは、この時点の英国ミステリ界における、日本での80年代前半における新本格の到来のような、カントリーパズラーのパラダイムシフトの転換だと思う。
(……とはいえ、ベントリーもノックスもバークリーも、まあみんな、その手の先駆といえば先駆、だよな?)

 あんまり具体的に詳しくは書けないけれど、たぶんこの作品からしてすでに、11年後にデビューするデクスター辺りにも影響を与えたんじゃないかと(これも、どっちのネタバレにはギリギリなってないとは思う)。
 
 さすがに2020年代に改めて読むと、新古典になってしまった作品ではあるが、お話の端々に感じるミステリ作家としてのセンスは今読んでも光ってる。

 でも、昔読んだときは、個人的には『ドーヴァー2』『3』の方が好きだった。そっちもそのうち、再読してみよう。

No.2 7点 nukkam
(2016/07/30 05:25登録)
(ネタバレなしです) 英国のジョイス・ポーター(1924-1990)は空軍に所属してスパイのトレーナーを担当したこともある変わったキャリアを持った女性作家です。その経験を活かしてスパイ小説も書きましたが1番有名なのは1964年発表のデビュー作である本書に始まるウィルフレッド・ドーヴァー主任警部シリーズの本格派推理小説です。その作風は強烈なユーモアと皮肉そして下品な描写もいとわない、かなりくせのあるものです。何よりもドーヴァーがデブで不細工、身だしなみはいい加減、性格も最悪とほとんどいいところのないアンチヒーロータイプに描かれています。さて本書はデビュー作でまだ作者も慎重なのか、前半のドーヴァーは多少強引ながらも意外とまともに仕事しています(あくまでも後年の作品に比べればですが)。とはいえ中盤以降は予測を越えた展開に圧倒されます。失踪事件という地味になりがちなテーマですが全く退屈しませんでした。犯人当て謎解きの伏線もしっかり張ってあります。あまりにもブラック極まりない真相で好き嫌いがはっきり分かれる作品ではあるでしょうがインパクトは強いです。

No.1 7点 こう
(2008/05/19 23:54登録)
 動機に焦点を当てた秀作のドーヴァーシリーズ第一作です。100キログラムを超えた巨漢女性が町一番の奔放な女性で彼女の失踪事件が起きて、という話です。読み進めてゆくうちに殺人であることが提示されるのですが何故彼女が殺されたのか、死体はどこにあるのか、という点への解決法が凄いです。問題点としては死体が見つかっていないのに殺人事件と断定する所が不可解な点と被害者の女性のキャラクター設定に無理があることです。(若いスレンダーな美女という設定でも同じ話が成り立つので)。結末は後発例もありますが衝撃があると思いますが逆にドーヴァーシリーズに対する予備知識があると簡単に殺人動機がわかります。自分は予想があたり衝撃も低かったです。

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