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ミステリの祭典

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少女は殺人の夢を見る

作家 阿津川辰海
出版日2026年07月
平均点7.33点
書評数3人

No.3 7点 メルカトル
(2026/08/27 22:16登録)
サークル<月夜のお茶の会>の読書会に参加した俺・獏田格は課題本のミステリー小説に酷似した「事件」に巻き込まれる。そこは二年生の先輩・夢見灯が作り出した「夢の世界」で、謎を解かなければ俺は現実に戻れない⁉ カー、クリスティー、クイーン、そして……。本格ミステリー界の若き旗手が先人たちを徹底オマージュ。
Amazon内容紹介より。

あとがきを含めて、この小説に載っている本を全て読んだ人は、正真正銘のミステリマニアに認定されるべきでしょう。それ程本格ミステリに淫した作品です。各名作のオマージュである夢の中の事件は勿論注目に値しますが、そこに至るまでに<月夜のお茶の会>で交わされるミステリ談議が楽しく、マニア度の高い人程より楽しめる事は間違いありません。

最初は現実に起こる事件ではない為、ある種の緊張感に欠けると感じましたが、読むごとに慣れました。私の一押しは法月綸太郎の『死刑囚パズル』をもどいた『女死刑囚パズル』です。本家を超える勢いのホワイダニットには唸らされました。趣向を変えた『三階の窓』もリレー小説のぎこちなさを再現しながらも、その仕掛けに深く肯きました。ただクリスティーの『そして誰もいなくなった』へのオマージュは正直ややこし過ぎて、私の頭では付いて行けませんでした。情けないことです。

No.2 7点 kanamori
(2026/08/21 17:34登録)
東京大学の読書サークル「月夜のお茶の会」に入会した獏田格(ばくた・いたる)は、二年生の先輩・夢見灯(ゆめみ・あかり)が主催する読書会に参加する。そこで彼女が淹れた紅茶を口にすると強烈な眠気に襲われ、課題本の名作ミステリに酷似した「事件」に夢の中で巻き込まれてしまう。その夢の世界の謎を解かないと、現実に戻れない?………というような特殊設定の連作ミステリ短編集。

マニア向けに寄りすぎているきらいはあるものの、これは読んでいて非常に愉しかった。本格ミステリ黄金期の巨匠、カー、クリスティ、クイーン、新本格ムーヴメントの嘗ての旗手、法月綸太郎、綾辻行人ほか、乱歩主導のリレーミステリの古典「五階の窓」を含め、6編の名作ミステリを”もどき”ながら単なるオマージュに留まらず、部分的に新たな要素を加えたり、設定をアレンジしながら「別解」を導き出すという離れ業に近いことまでやっています。
作者はもともと、過去の名作ミステリにインスパイアされたような作品やオマージュ風のミステリを幾つか書いて来ていますから、自身が大学時代に所属していたサークルをモデルにして、そのような思いが本作に凝縮されているように感じました。
読書サークルが舞台なので、主人公の獏田と古参メンバーとのマニアックなミステリ談議やウンチクも愉しいですし、中には作者の評論じみた作品分類や分析も出てきて、色々な楽しみかたができて読み応えがあった。
個別のエピソードに関して書きたいことがありますが、出来れば後で追記することにします。

No.1 8点 mozart
(2026/08/06 20:38登録)
東京大学のサークル「月夜のお茶の会」の新入りメンバーである獏田格が、先輩である夢見灯がお茶会の場で紅茶をふるまうことでメンバーを眠らせその夢の中で課題本(ミステリー作品)を模して起こす事件を探偵役として解く(ことで目覚めることができる)、という筋立てがメイン。読書会の課題本の中には未読の作品も含まれていましたが(ネタバレは当然ありませんが)概要が分かるようになっているのでそれほど問題はありませんでした(読んでいた方がより楽しめたのは間違いないでしょうが)。全て夢の中の事件なのでサークルメンバーが殺されるような事件でも安心して(?)パズルとして楽しめました。自分としてはメンバーによるリレー小説なのに○○を使った「三階の窓」が特に気に入りました。灯の夢の中の事件ではなかったもののしっかり彼女の手の内で話が作られていた、と。

彼女が獏田を「特別視」して探偵役をさせる理由については最終話「九角館の殺人」で明らかになるのですが、二人の関係性に含みを持たせた終わり方で続編も期待したくなります。

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