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ミステリの祭典

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ながい眠り
警察署長フレッド・C・フェローズ

作家 ヒラリー・ウォー
出版日1974年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 6点 クリスティ再読
(2022/10/29 09:28登録)
ハヤカワと創元、カラーの違いが頭に刷り込まれている部分があるからか、本作みたいにポケミスで読んだ記憶がしっかりある作品を、改めて新訳の創元で読み直す、となると何となく違和感(苦笑。「ユダの窓」もそうだけど)
まあカーなら気にしないけど、ヒラリー・ウォーなんだよね。解説もそれとなく「本格」側に持っていきたがる....いや、それが創元のカラーというものなのかしら。いや警察小説だって「ロジック」なしに逮捕してたら人権侵害、というものでしょうよ(苦笑)

だから本書の一番の「警察小説らしさ」ってこういうセリフなんだと思うんだ。

フェローズは肩をすくめた。「知るもんか」

パズラーだったらすべてが合理的に割り切れないといけない。警察小説だったら、理屈で割り切れなくても「う~ん、そういうバカなこと、あるよね」で十分。それが「警察小説のリアル」なんだと思う。いや実際、改めて犯人の行動を真相から省みたら、ヘンなことばっかりしている小説だとも思うんだ。

だから逆に「本格にしたがる傾向」というものが、70年代あたりの「ミステリのモダン」を主導したハヤカワのカラーからの離脱、カッコよく言えば「ポストモダン化」みたいなものを象徴するようで、作品を離れてヘンに興味深い。(作品はもちろんウォーらしく手堅く面白い。ちなみにタイトル「長いお別れ」+「大いなる眠り」に加え、原題「SLEEP LONG, MY LOVE」だと「FAREWELL, MY LOVELY」にも似てる...)

No.3 6点 E-BANKER
(2017/04/01 09:24登録)
1959年発表。
作者の主要キャラクターのひとりであるフレッド・フェローズ署長初登場作品。
原題は“Sleep Long, My Love”

~1959年2月28日の朝、<レストリン不動産>に出社した仲買人ワトリーは、事務所が盗難に遭ったことに気付く。しかし、刑事が尋ねると奇妙なことに、盗まれたのは賃貸契約書のファイルだけだと言う。そして、同社の貸家の一軒から、胴体だけの女性の死体が発見された。遺されていたのはスーツケースと「ジョン・キャンベル」という名前、そしてメモ用紙に筆圧で残った筆跡だけ。殺されたのは誰か? 殺したのは「ジョン・キャンベル」なのか? 僅かな手掛かりに基づくフェローズ署長の推理は、新たな反証につぎつぎと崩されてしまう・・・~

今まで読んだウォー作品の中では一番好感が持てた。
そんな読後感。
ただ、「誰が殺したか」はもちろん、「誰が殺されたか」も判然としない中盤は、何とも曖昧模糊としており、読者としても我慢を強いられる。
フェローズ署長の捜査もかなり難航。
「ああでもない、こうでもない」と仮説を立てては、すぐに崩されていく展開なのだ。
(むしろ部下たちが喜んで崩していく・・・という感じ)

もう残りページも僅かという段階まできて、急転直下、真相が判明する。
これをカタルシス!と取るか、唐突!と取るかは微妙なのだが、フーダニットの観点から見ると、実にミステリーらしいプロットなのは間違いないだろう。
確かに伏線はふんだんに張られており、この辺りは他の方も指摘しておられるとおり、本格ミステリーっぽい。

というわけで、ウォー=警察小説というイメージとは若干異なるのが本作と言える。
比較的万人が楽しめる作品・・・ではないか?
(ただ、首切りの動機がこれではどうかと思うが・・・)

No.2 6点 nukkam
(2009/06/09 17:21登録)
(ネタバレなしです) ヒラリー・ウォー(1920-2008)はハードボイルド作家として1947年にデビューするもそちらではあまり成功せず、「失踪当時の服装は」(1952年)に始まる警察小説の分野で巨匠と呼ばれる地位を確立した米国作家です(但しハードボイルド小説も1980年代から再び積極的に書くようになりました)。フェローズ署長シリーズは警察の捜査を丁寧に描くだけでなく謎解きの伏線もきちんと張ってるので本格派推理小説好きにも勧められるとのことです。1959年発表の本書がシリーズ第1作ですが犯人の正体どころか(頭と両手両足を切断された)被害者の身元さえ容易に判明せず、あまりの難事件にフェローズ以外の捜査陣はギブアップ寸前です(笑)。なかなか進展しない捜査に読者も我慢くらべしているような気分になります。謎解きは確かにしっかりやっていますが、あれだけしぶとかった犯人が観念するほど最後に提示された証拠に決定力があるのかはやや疑問が残りました。

No.1 6点 mini
(2008/10/18 12:13登録)
警察小説の元祖みたいに言われるウォーではあるが、初期はその通りの王道な警察小説だが、中期以降のフェローズ署長ものは若干傾向が違い本格色が顕著だ
「ながい眠り」はフェローズ署長もの第一作で、物語の中盤で捜査が暗礁に乗り上げてしまい雲をつかむような状況になるのがいかにもウォーらしいが、ちゃんと仕掛けがある
わざとらしいミス・ディレクションもあるが、後半は容疑者が絞り込まれてしまうので、初心者でもない限りは仕掛けは見破れると思う
でも本格初心者なら意外と楽しめるんじゃないかな

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