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ミステリの祭典

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ハリー・ポッターと謎のプリンス
ハリー・ポッター

作家 J・K・ローリング
出版日2006年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2025/09/26 13:31登録)
後半では一番地味な巻、というか「タメの巻」のわけである。最終盤に向けて転機となるショッキングな一大事件が発生するわけだが、意外にポイントが少ない巻かも。亡くなるべき人が亡くなるのは、プロットの必然だからね。
前半ではケイティが触った呪われたネックレス、ロンが飲んだ蜂蜜酒に毒が入っていた件など、ミステリ的に展開するのか?と期待される事件があるんだけども、ちゃんとミステリ的な展開をするわけではない。
一番の興味はヴォルデモートの過去がさまざまな証言から暴かれて「トム・リドルがヴォルデモートになっていくさま」が描かれていくこと。そしてキーアイテムになる「ホークラックス」の謎。ここらへんが描かれていく巻になるから、まさに最終巻に向けての前提を構築する「助走の巻」である。もちろん、最終決戦でのハリーの勝利を導く伏線もしっかりと敷かれているのだけど、これ普通気がつかないよね。

ある意味皮肉なことは、スリザリン純血主義の代表者であるはずの、ヴォルデモートとスネイプ先生が、二人とも半純血なことあたりかな。これは過激な主張をする人々こそが、その主張の「純粋さ」が疑わしいという経験的な知識とも一致する。過激な主張には提唱者のコンプレックスが胚胎しているからこそ、不寛容に「過剰適応」を主張することが多い。ゆえに過激な意見には常に懐疑的でなくてはならないんだよ。
だから「純血のプリンス」であるドラコくんの立場が微妙にもなるわけだ。本来の正当性あるエリートは、過激主義の中での立場を失いやすいのは眼に見えている。評者リアルタイムだと、ドラコくんが父親ともども主人公側に転向して、ドラコくんが意図せずにハリーの盾になって死ぬとか、そういう展開を期待していたくらい。ハリーごときの盾になって死ぬ自分を罵るドラコくんって、イイじゃない?まあそうはならなかったが(苦笑)正義の側であっても、一枚岩じゃないというのが評者は好みだ。ドラコをタダの敵役はないキーパーソンに設定していることが、いろいろと興趣を深めているわけでもある。

(あとこの巻はぐっと大人びたトリオが、いろいろと恋愛関係でごちゃごちゃする。もともとみんな感じていたことだろうけど、この巻でもうハリーとハーマイオニーが成立するという期待する人はいなくなったんじゃないかな)

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