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ミステリの祭典

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ハリー・ポッターと秘密の部屋
ハリー・ポッター

作家 J・K・ローリング
出版日2000年09月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 8点 Tetchy
(2024/11/29 00:30登録)
映画を先に観ていることもあって、文章がするするとイメージを伴って頭に入っていく。

今回は多重構造のプロットであり、少年少女の読み物としては高度な内容だと思った。
秘密の部屋を中心にして起こる怪事件の犯人及び共犯者(正しくは共犯を自分の意志に関係なく強要された者)、秘密の部屋を探し当てるまでの経緯に仕掛けられた構造はかなりの紆余曲折を経ており、物語作家としてのローリングの才気溢れるといった感じだ。

犯人のアナグラム、共犯者がなぜ共犯せざるを得なかったのか、そして共犯者にジニー・ウィーズリーが選ばれた政治的陰謀、これら全てがものすごく練られていた。
秘密の部屋を核にしてマトリョーシカのように入れ子構造で数々の登場人物の思惑が交錯する。このプロットを十全に理解した少年少女は果たしてどれだけ存在するのだろうか?

クリスティ再読さんもおっしゃっているが、単なる少年少女向けファンタジーに終始していなく前述のような特徴からも判るようにミステリの要素が色濃くあり、これはやはりイギリスの作家であることも起因しているのだと思う。
ミステリ発祥の地イギリス。やはりミステリの血は濃いということか。

No.1 8点 クリスティ再読
(2024/11/26 16:04登録)
ハリポタ第二作。どうしてもイントロ的な内容が多くなる「賢者の石」とは違い、フルスペックのハリポタ。特に本作は謎解き要素が多く含まれていて、連続石化事件の意外な犯人とか、トム・リドルの謎、壁から聞こえる謎の言葉、そしてハリー自身が「自分が本当のスリザリンの後継者なのでは?」と疑惑に駆られるなど、ミステリ的な興味が濃厚にある。あれもこれも、いや実に伏線だらけ。

このシリーズは、単に「冒険」「ファンタジー」とも言えない、ジャンルミックス的な側面が強くあり、それがイギリスの伝統的なエンタメ書法のようにも感じられるのだ。本作だとミステリの「連続殺人モノ」的な趣向が効いている。その中で「操り」が真相にも含まれていて、この「操り」の真相がハリー自身とヴォルデモート卿との関係にも影を落としている。実際、ハリーとヴォルデモート卿が表裏一体の関係にもあるわけで、これがシリーズ終盤でも大きなテーマにもなる。

まあここではハリーが自分に対して持つ「疑惑」として、いい意味で「複雑性」のスパイスを加味しているようにも感じる。ハリポタの中でもまとまりのいい作品だろう。

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