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ミステリの祭典

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ぼくの家族はみんな誰かを殺してる
アーネスト・カニンガムシリーズ

作家 ベンジャミン・スティーヴンソン
出版日2024年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2024/11/21 04:25登録)
(ネタバレなしです) コメディアンとしても活躍しているオーストラリアのベンジャミン・スティーヴンソンによる2022年発表の長編ミステリー第3作です。ハーパーBOOKS版の表紙イラストが人物の表情を目を意図的に描かず少し不気味で、私はサイコサスペンス系かと思ってました。しかし冒頭にロナルド・ノックスの「探偵小説十戒」(1928年)が置かれ、作中でも主人公の語り手が何度も「嘘や隠し事はしない」と宣言して読者に対してフェアプレーの謎解きを挑戦する本格派推理小説で、終盤の36章では「謎解きに必要とした手がかり」が列挙されています。もっともこの手がかりの推理説明への結び付け方についてはやや難解に感じる部分もありましたが。また主人公が家族内で微妙な立場であることが本書の個性でもあるのですが、ハードボイルドほどではないにしろドライに描かれる心理描写が共感しにくいと感じる読者もいるかもしれません。

No.1 8点 HORNET
(2024/08/13 20:14登録)
 アーネスト・カミンガムは3年前、兄のマイケルの殺人を警察に告発した。マイケルが刑務所から出所する日、叔母の呼びかけにより冬のスキーリゾート地にて親族皆でマイケルを迎えることに。「警察に兄を売った裏切者」と、冷たいあしらいを受けるアーネスト。複雑な雰囲気で兄の到着を待つ中、リゾート地内で身元不詳の男の死体が発見された―

 猟奇的なストーリーを想像させるタイトルだが、物語はそのような様相ではなかった。犯罪者の家族として世間から冷たい目で見られている一族が、新たな殺人事件に遭遇する中で、3年前の事件の真相に近づいていく。非常にしっかりした作りの本格的「フーダニット」で、物語の背景が複雑なきらいはあるものの、往年の本格好きには好まれるのでは。
 冒頭に主人公が兄・マイケルの罪を目撃したシーンが描かれ、その回想を踏まえたうえで現在が描かれていくという手法はもう馴染みだが、リゾート地で起きた殺人事件との結びつきがまるで見えず、前半はストレスになるかも。だが、後半、殺人が続いていく中で少しずつ事件の輪郭が見えてくるあたりからは、非常に面白い怒涛の展開だった。
 とても楽しめた。

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