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ミステリの祭典

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出口のない部屋

作家 岸田るり子
出版日2006年04月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2012/08/13 18:39登録)
(ネタバレなしです) デビュー作の「密室の鎮魂歌」(2004年)はサイコ・スリラー要素のある本格派推理小説ですが、2006年発表の長編第2作の本書は本格派推理小説要素のあるホラー小説というのが個人的な評価です。怖いというより気持ち悪いと感じましたが。前半はややもたもたした展開で、犯罪描写はありますがミステリーらしくありません(ホラーらしくもありません)。後半はテンションが上がります。謎解きはやや駆け足気味な気もしますが、要点のわからないばらばらの物語を有機的にまとめあげる手腕は見事で、作者の実力の高さを十分に示しています。本格派とホラーの組み合わせというと今邑彩や綾辻行人もそういう作品を書いているので比較するのも面白いかも。

No.2 6点 E-BANKER
(2012/05/27 21:52登録)
「密室の鎮魂歌」でデビューした作者の第2長編。
作者らしい独特の世界観が滲み出る作品、という印象。

~赤いドアの小さな部屋に誘われるように入り込んだ3人の男女。自信あふれる免疫学専門の大学講師・夏木祐子、善良そうな開業医の妻・船出鏡子、そして若く傲岸な売れっ子作家・佐島響。見ず知らずの彼らは、なぜ一緒にこの部屋に閉じ込められたのか? それぞれが語りだした身の上話に散りばめられた謎。そして全ての物語が終わったとき、浮かび上がってくる驚くべき事実・・・~

何とも言えない読後感の残る作品だ。
2作目とは思えないほどのストーリーテリングで、グイグイ読まされてしまった。
紹介文からすると、岡島二人の「そして扉が閉ざされた」のようなストーリーなのかと予想されるが、全く異質な世界。
ロジックやトリック云々から解決を導くといったタイプのミステリーではない。

鋭い読者なら、読み進めていくうちに徐々に作者の仕掛けた伏線に気付くだろうが、なかなか凝った構成になっている。
特に、「作中作」の部分がクセもの。
ただし、前半部分にかなり伏線というか、ヒントは撒かれているので、すべての真相が示される「エピローグ」の前で大筋のプロットに気付くのではないかな。

でも、あの医学的技術(○転○手○)ってそんなにスゴイのかなぁ・・・。
(京都の売れっ子○○になれるくらいなんだから、相当スゴイ技術なんだろう)
その辺が衝撃的な真相と相俟って、若干疑問には思えたが、マズマズ評価できる作品でしょう。

No.1 7点
(2010/03/14 20:37登録)
前作が鮎川哲也賞を受賞した密室ものだというので、オーソドックスな謎解きミステリを想像していたのですが、これは…
構成がまず、プロローグのレベル、作中作の出口のない部屋のレベル、そしてその部屋に集められた3人の人物の過去の事件のレベル、と3段階に分かれ、中盤まではミステリらしくなく、むしろじっくり型サイコホラー系を思わせます。
3人の人物の話がどうまとめられてくるのか。そしてプロローグとどうつながるか。3人目の話からそれが見え始め、2/3を過ぎるあたりからは話の展開も一気にミステリになります。まあ、個々の殺人トリックはどうということもありませんし、推理で謎が解かれるわけでもありません。構成の妙と人間心理の描き方で読ませる作品です。しかしエピローグはやっぱりホラーっぽいところがあるなあ。
プロローグを過ぎた後、すぐにある奇妙な点に気づいたのですが、読み終わって考えてみるとやはりそれが意味を持っていましたね。

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