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ミステリの祭典

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蠟燭は燃えているか
女子高校生・真田周

作家 桃野雑派
出版日2024年04月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 4点 虫暮部
(2024/11/08 12:35登録)
 イマイチ。友達からの連絡を受ける為に動画で注目されよう、と言う案は、回りくどくてそこまで効果的には思えない。それで炎上しても意地を張るように頑なに維持。別の視点から描けば、この主人公は非常に浅慮で自分勝手に見えるだろう。
 “共感出来ない主人公” だから駄目と言うことではないが、導入部で距離を感じて、それが改善されることは無かった。
 社会派めいた部分も、“被害者教” と言うカルトみたい。“まず現実的な対応をすべきでは?” と思ってしまった。

No.2 7点 人並由真
(2024/06/11 21:58登録)
(ネタバレなし)
 20XX年(2020~30年代らしい)の後半。地球軌道上の宇宙ホテル「星くず」での殺人事件に遭遇し、生き残った関係者とともに地球に帰還した女子高校生・真田周(あまね)。周は大気圏突入時に、ある意図と思いのもと、ネット経由でピアノ演奏を行なうが、その行為を当人の思惑と違う形で受け取った人々の反響は「炎上」状態となった。そんななか、周に向けられる書き込みの中に、京都市内で放火を行なう旨の犯行予告があるが。

 物語のステージを大きく変えながら、前作のキャラクター設定は継承。そして先行作と通底する、ある種のメッセージ性を続投。
 ある部分を大きく切り捨て、一方でまた別のコアの部分は継承する、そんなシリーズもののありようが、実に楽しい。
 個人的には、これはこれで、シリーズものミステリの、ひとつの理想的なメリハリのつけ具合である。

 ネットの舌禍を主題にした人間の愚行の描写は不愉快な印象はあるが、作者なりの21世紀の現実の文明への取り組みだということは理解できる。
 当初はトラブルに巻き込まれた主人公を応援しようとしていた学校側が、主人公の暴走(青春ドラマ主人公としての)に振り回されて、対応がルーズになっていくあたりの妙に説得力のあるリアリティ描写にも感心する。
 
 物語の転がし方がいささか生硬で、昭和の一級半社会派ミステリを2020年代作品の鋳型のなかに押し込んだような印象もあったが、最後に明かされる犯人の真の動機はそれこそ「いろいろと考えさせられる」。

 どうあがていても人間の心の中に善と悪が並存するという現実は永遠に変わらないなか、じゃあどうするかというところで、ひとこと、たぶんそれだけは確実に間違いないことを言った主人公の叫びは、評者の笑みを誘った。
 うん、お話として、エンターテインメントとして、メッセージドラマとして正しい作りだと思う。
 いろいろ綻びはあるような気もしますが、私はそれなり以上にこの作品がスキです。

No.1 4点 文生
(2024/05/11 05:29登録)
女子高生の真田周を主役に据えた『星くずの殺人』の続編です。前作は宇宙を舞台にしたSFミステリーだったのですが、今作はSFっぽさはきれいさっぱりなくなってしまい、京都を舞台にした連続放火殺人を扱っています。しかも、SNSによる誹謗中傷がテーマになっており、胸糞展開が続くのでとにかく読んでいて楽しくありません。謎解き要素もあまりなく、社会派ミステリーといっても差し支えないほどです。最後に意外な動機が明らかになり、終わってみればホワイダニットメインの本格ミステリだなということは理解できるものの、前2作に比べてエンタメ度が低くなっていることから点数は低めとなります。

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