君の膵臓をたべたい |
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作家 | 住野よる |
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出版日 | 2015年06月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | 虫暮部 | |
(2024/05/02 14:29登録) マニアックな内臓選びだな。五臓六腑にも含まれてないんだぜ……まずタイトルで勝ち。しかも看板倒れとは言わせない。流れるような会話劇はイマドキの作家の基礎教養と言った感じだが、Xデーのその先、ああいう内省をキッチリ伝わるように書けるのは高評価。 ただ、狙いや効き目がちょっと判らない演出もあって、そういうものが常に無駄とは言わないが、本作に関してはスマートに凸凹を削ぎ落とした方が良かったんじゃないかと思う。 |
No.1 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2024/03/09 20:54登録) 「いい天気ー。こんな日に死のうかなー」 不治の病を膵臓に抱える女子高生は『共病文庫』なる秘密の余命日記を付けている。 現代医療のお蔭で外観は普通に明朗快活な高校生活を送る彼女。 クラスメイトの静謐男子がある日、通院先にて偶然『共病文庫』の存在を知る。 そこから始まる、二人を中心とした、奥深く謎を秘めた青春&人生ストーリー。 「いやぁ、君がまさか私をそこまで必要としてるなんて、思いもよらなかったよ。人間冥利に尽きるね」 殺人事件が起きた。 主人公には名前が無い(最後に明かされる..?)。 ヒロインには将来が無い(だが現在は輝いている)。 この物語にはどうも何かある。 変わりゆく主人公。 この、大馬鹿者・・・・ んもう、じれったいんだか何だか。 “また彼女は韜晦に走るだろうか。そうしたら、僕はどうしよう。更なる追及の勇気が、僕にはあるだろうか。あったとして、何か意味があるのだろうか。” こう見えて本作、親子愛とキレッキレな友情、そして未来と青空の物語であることは確実。 仄暗さと明るさの好配色のような、柔らかいがイテテ率も高いユーモアが遍く浸透。 ぅっぁーたまらない会話の投げ合いとか。「革命に次ぐ革命で国民がいなくなるよ」 心の言葉のすれ違いとか。。 “やっぱり私は弱い。ばれなかったとは、思う。” 何処となく漂う、大◯◯トリックへの予感や、その手掛かりめいたもの。 何気なく挿入される ”クイズ” 的な何か。 一見勘違いのようで・・・そうでないような絶妙なダブルミーニングもどき。 主人公の特性に頼った、素晴らしき逆説の煮詰め具合。 ヒロインの命が掛かっている事を実感させるに足る、言葉の意味深さの沁み渡り。 「家に挨拶したの。私を育ててくれた大切な場所だよ」 ようよう結末へ向かうにつれ、来た来たあぁーーと押し寄せる波しぶきの圧と祝福にやられたし。 “旅行も楽しかったし” ・・・ これ泣けたなあ “一度胸に抱いて” ・・・ このワンフレーズも本当にやばかったですよ 単なる(?)メモの、等比級数的にぶち上げ広がる、心への何か・・・ これほど泣かせる事務的事項の羅列、「(怒)」、「(第一回)」あるかってんですよ。 アレの感動突風のすぐ後に、ミステリ興味のズキズキワクワク展開図を置きに来るってのもねえ、色んな方向から揺さぶられて、こりゃあもうたまらんのですよ。 “仕方なく僕は「考えておく」と答えた。彼女は「お願い」と一言だけ添えた。意味のある一言だった。” 『生きる意味』について、あるいみ最近の理論物理学にも通じるような、ちょいと深い、い~い事が語られるシーンもありました。 最後の方、「えっ!? そっち?!」と展開に嘆き、そこにバランスの悪さを感じもしたけれど、考えたらそれはこちらが勝手に、ある種の静かな常套展開を想定してたに過ぎないのですな。 そんなもの、必要ありませんね。 “世界は、差別をしない。” 本作、可読性こそめっちゃあ高いが、一気に読んじゃああまりに勿体ない。 是非、じっくり行きましょう。 略称は「キミスイ」だそうです。「人間の証明」のアレをチョイ思い出します。 娘の男子クラスメイト推し本を読んでみました。 |