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ミステリの祭典

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悪なき殺人

作家 コラン・ニエル
出版日2023年10月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 6点 蟷螂の斧
(2024/04/20 15:07登録)
題名は大事だなと思った作品。「悪なき殺人」とはいったいどういう殺人なのか?と思いながらの読書。しかし、結果は悪意はあった。原題は邦訳すれば「動物は知っている」らしい。これもちょっと意味不明(苦笑)。内容は5人の視点が描かれ、徐々に各人の繋がりや伏線が回収されていくという形式。それは楽しめた。ただし、ラストの一行はどうなんだろう?。あまり感心しない。サイコ系ならありかもと思うが・・・。

No.2 7点 人並由真
(2024/03/11 15:59登録)
(ネタバレなし)
 フランス中央部の高原コース地方。そのロゼール県。42歳の女性で農協のソーシャルワーカーであるアリス・ファランジュは、牧場を営む婿養子の夫ミシェルと暮らすが、子供はなく、夫婦仲は冷え切っていた。そんななか、アリスは行政の被支援側の地元住民で46歳の独身男、山間で羊の牧場を営むジョゼフ・ボヌフィーユと不倫関係になった。やがてアリスの周囲では、ある人物の失踪事件が起きる。

 2017年のフランス作品。本邦初初回の作家。
 まったくノーチェックだったが、HORNETさんのレビューと高い評点で気になって、読んでみる。

 本文は文庫本で380ページ弱。やや厚めだが、文庫の字組は大きめの級数で翻訳も特に淀みなく、スラスラ読める。
 話者が主要登場人物のひとりアリスの一人称「あたし」に始まり、数十ページ単位で交代。ひとくぎりのところでまた別の人物の一人称(「おれ」だの「あたし」だの)に推移しながら語られつつ、物語が組み上がっていく。

 いわゆる拡張型の構成というかプロットで、最初に巻頭の登場人物表を眺めると若干「?」となる面もあるが、実際に当該のキャラクターの箇所にいくころには、ああ、そういうことね、とわかるはず。

 技巧的で凝ったプロットのようだが、メインのアイデアそのものはもしかしたら、実は意外にシンプルかもしれない……? とも思う。
 ただし、それでも良い意味で、闇の霧の中を歩くような気分で読み手をぐいぐい引っ張っていく(そして途中で、ああ、ここであの伏線を回収か! とハタと膝を打つ)感覚は、なかなか心地よい。

 王道派の技巧系フランスミステリの流派に、50~60年代の英国文学派ミステリの小説としての読みごたえを足したような感触の一冊で、まるまるひと晩、かなり楽しい時間を過ごせた。昔だったら、創元の旧クライムクラブでの翻訳刊行が似合いそうな長編。

 改めてHORNETさんに、このサイトに感謝、である。

 書き手の筆力そのものが大きくモノを言った作品でもあり、本作はノンシリーズの単発長編だが、ほかに作者は警察小説の人気シリーズも手掛けているというので、そっちもいずれ読んでみたい。
 評点は8点に近いこの数字で。

No.1 8点 HORNET
(2024/02/25 19:07登録)
 吹雪の夜、フランス山間の町で一人の女性が殺害された。事件に関係していたのは、人間嫌いの羊飼い、彼と不倫関係にあるソーシャルワーカーとその夫、デザイナー志望の若い娘という、4人の男女。それぞれの報われぬ愛への執着を描く物語は、遠くアフリカに住むロマンス詐欺師の青年の物語と結びつき、やがて不可解な事件の真相を明らかにしていく。思わぬ結末が待ち受ける心理サスペンス。ランデルノー賞(ミステリー部門)受賞。(「BOOK」データベースより)

 農夫と不倫しているアリス、その相手の農夫ジョゼフ、デザイナー志望の女マリベと、各人物の視点から描かれる章が続く中、読者は事件の像を想像する。分かりそうでいまいちピンとこないその想像が膨らんだ先に、「アルマン」というロマンス詐欺師の章になり、全く意外な物語の仕掛けが明らかになる。最後、アリスの夫・ミシェルの章で終わる構成には膝を打つ思いで、高いストーリーテーリングの技量を感じさせる一作。
 何となく、ルース・レンデルを思い起こさせるような作風で、私の好みに合う作品だった。

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