隣人を疑うなかれ |
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作家 | 織守きょうや |
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出版日 | 2023年09月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 6点 | E-BANKER | |
(2025/08/03 13:13登録) 先日、作者の初読みが連作短編集だったので、長編も読んでみようということで。 本作も作者の属性(弁護士)を反映した作風になっているのかな? 単行本は2023年の発表。 ~「羊の群れに狼が潜んでいるなら、気づいた誰かがどうにかしなければ、狩りは終わらない――。」 自宅マンションに殺人犯が住んでいる? 隣人の失踪をきっかけに不穏な疑念を抱いた主婦の今立晶は、事件ライターの弟とともにマンションの住人たちを調べることに。死体はない、証拠もない、だけど不安が拭えない。ある夜、帰宅途中の晶のあとを尾けてきた黒パーカの男は誰なのか?平凡な日常に生じた一点の黒い染みが、じわじわと広がって心をかき乱す、傑作ミステリー長編~ 「もう一押し欲しかったな」というのが、読了後の感想。 総じていえば「面白かった」んだけど、それだけに、真犯人が確定し、さらなる仕掛けがあったとはいえ、「もう少し用意されてるんじゃないか」という期待が大きかった。 ただ、そのまま終了してしまった。 他の方も書かれてるけれど、リーダビリティは非常に高いと思う。スイスイ読まされるし、次の展開を期待させるプロットも良い。 メインの謎となる若い女性を狙った連続殺人事件の真犯人。探偵役となる姉弟が、ターゲットを絞り込んでいくものの、結果としては、推理や捜査によるものではなく、犯人サイドの自滅のような形で終結している。 まあガチガチの本格というわけではないから、それはそれで良いのだ。 事件のカギとなる人物のひとり、同じマンションに住む、美人で男という男に愛想を振りまかずにはいられない主婦。 ラストには、この主婦の独白パートまで用意されているわけだから、ここに何か捻りがあると思っちゃうよなあー それが、「あと一押し」につながってしまった。 でも、まあ読みやすいし、決して駄作ではないと思う。ちょっと手慣れすぎてるだけ。 |
No.2 | 6点 | HORNET | |
(2025/07/06 18:04登録) 神奈川県山北町で起きた女子高生殺人事件。千葉県のアパートに住む漫画家・土屋萌亜は、その女子高生を事件直前に見かけたことに気付き、事件ライター・小崎涼太にそのことを話す。すると、しばらくして萌亜は失踪。小崎は、萌亜の向かいのマンション住む姉・今立晶にそのことを相談し、状況から、マンションの住人に犯人がいるのでは…?と疑い、調べ始める。死体はない、証拠もない、だけど不安が拭えない。マンションに"殺人犯”はいるのか、いるとしたら"誰"なのか― いかにも怪しげな登場人物の様相を振りまき、さまざまな想像(推理)を掻き立てさせる展開。よってリーダビリティは高く、どんどんと読み進められる。 こういう展開なら、たぶんコイツだな…と思って読んでいたが、さらにその上をいく仕掛けだった。ただご都合主義が過ぎる、と感じる読者もいるかもしれない。 それは否めないところはあるが、予想通りよりはよかった。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2023/10/25 22:16登録) (ネタバレなし) 「私」こと、千葉県のアパート「ソノハイツ」に住む漫画家の卵で、今はアシスタントで生活している20代後半の土屋萌亜(もあ)は、神奈川で殺された17歳の高校中退の少女・池上有希菜を先日、近所のコンビニで見かけたことに気が付く。萌亜は隣人のフリーライターで20代半ばの小崎涼太に相談。その案件は、小崎の姉で近所のマンション「ベルファーレ上中」に住む人妻・今立晶を通じて、晶の友人で刑事の妻・加納彩へと繋がっていくが……。 今年の新刊。大き目の活字でサクサク読める。 かたや作者も、ついに持ちネタの法律トリヴィアを使い果たしたか、そっちの方には今回はほとんど話が広がらない。 全体的に、赤川次郎の20~40冊目あたりの時期、書きなれてきた頃のなかでの佳作みたいな印象。話のテンポは悪くない。 ただし真犯人の素性というか、隠し方についてはいささかチョンボ。推理小説にするように見せかけて、そうはなってない。 もう一方のサプライズの方は、まあまあ効果を上げたが。 あと、小説として読んで、ともにメインヒロインの一角である晶と彩のキャラ描写がどっちもなんか似てるのがアレ。もうちょっと印象深い芝居をさせあって、うまく差別化させる余地はあったような気がする。 どっか、やや長めのフランスミステリみたいな雰囲気そのものはキライではない。 |