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ミステリの祭典

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貴婦人として死す
HM卿シリーズ

作家 カーター・ディクスン
出版日1959年01月
平均点7.29点
書評数24人

No.4 8点 文生
(2012/04/05 14:34登録)
『白い僧院の殺人』と並ぶカー作品における足跡のない殺人の双璧。
メイントリックの素晴らしさでは白い僧院だが、それに対して本作はメイントリック以外にも小技が隅々にまで効いており、ミステリー小説としての総合力ではこちらに軍配を上げたい。

No.3 7点 kanamori
(2010/06/26 16:41登録)
関係者の医師の手記の形で、H・M卿が関わる偽装心中事件が描かれています。
断崖まで続く男女の足跡トリックは二重の真相を用意して、そちらに目が行きがちですが、中核のトリックはさらに別にあって、巧みなミスディレクションになっています。
怪奇趣向や派手な展開はありませんが、一人称で語られる物語は淡々とした静かな雰囲気で、カーの作品としては読み心地がいい中期の傑作と言えると思います。

No.2 8点 nukkam
(2009/01/14 11:07登録)
(ネタバレなしです) 1943年発表のヘンリー・メリヴェール卿シリーズ第14作で、なるほど中期の傑作と評価されるにふさわしい本格派推理小説でした。崖に向かって続く男女2組の足跡。だが戻ってくる足跡はなく、2人が心中と思われる死体となって発見されるがやがて殺人の証拠が出てくる。しかし殺人となると今度は犯人の足跡がない謎が生じてしまうという厄介な事件です。しかし足跡トリックだけの作品ではありません。事件関係者を語り手にした1人称形式が効果的で、アマチュア探偵の役割も与えて謎解きの面白さを増幅しています。破綻したと思われる推理が決め手への一歩になったりとなかなか技巧的です。どたばたシーンもあってお笑いを演出していますが、一方で人情談としてもよくできています。

No.1 8点 mini
(2008/11/27 10:11登録)
「アクロイド」と比較する人も当然居るだろうね、多分カーも想定してこれ書いたんだろうけど
老医師の手記による1人称なので雰囲気は地味だし怪奇趣味も大して無いが、でもある意味カーらしさが存分に発揮された名作だろう
カーは案外と叙述な仕掛けを施す作家だが、この作品は特に作者の企みを前提に書かれた作品で、狙いは良く分かる
どうしても作者の思惑を考えて読んでしまう自分の性格は、作品鑑賞的に素直に楽しめないので嫌いなんだが、残念ながら真相はほぼ見破ってしまった
足跡トリックの方は、ある手掛りとなる物体に気付いて、トリックと関係ある伏線ではと思っていたのでズバリ
むしろなぜそんな足跡トリックを弄す必要があったのかの理由付けの方が巧妙で看破できなかったな、だからこんな場所を舞台に選んだわけね
さてもう1つの狙い、と言うかこっちの方がメインか。
真犯人の正体も単なる勘だけど想定してた通りだった、冷静に考えればこういう可能性も有るよな、と途中からずっと思っていたのでね
でも上手い、1人称だからこそ出来る芸当、まさに叙述トリックそのもので、これを意図的に使う事を思いついたカーのアイデア勝ちだな

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