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ミステリの祭典

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シュレーディンガーの少女

作家 松崎有理
出版日2022年12月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 SU
(2025/05/04 21:33登録)
六十五歳で死ぬことが義務付けられた社会で余命一年の主人公が少女を養子に迎えてしまう年の差バディもの「六十五歳デス」、BMI高めの参加者を集めて行われる政府主催のデスゲーム「太っていたらだめですか?」、数学嫌いの高校生が数学禁止世界に飛ばされる「異世界数学」ほか、全六編を収録している。
寿命や健康が管理される社会に異世界転生と設定自体は珍しくないが、上に載せられた物語とアイデアの捻り具合が絶妙。作者らしいユーモアと理系ネタの隠し味が利いており、権力や状況に流されずに決断を下してゆく主人公たちもカッコよい。白眉は量子自殺を扱った表題作で、多世界解釈、パンデミック、フレンドAIなど見慣れた材料の組み合わせから、読者を巻き込む鋭い思考実験が繰り出されている。

No.2 6点 糸色女少
(2023/11/17 22:28登録)
様々なディストピアにあらがう女性たちを主人公にした6編からなる短編集だが、それらのディストピアは私たちがふと思い浮かべる日常的空想を徹底したような世界だ。
命の定年がある世界を舞台にした「六十五歳デス」や、健康のためであるはずの肥満対策が極端化された「太っていたらだめですか?」には、ユーモアながら極端な適正化志向が本末転倒に陥りかねない社会への風刺が感じられる。表題作は量子力学の有名な命題を応用し、多世界解釈を巧みにエンタメ化している。

No.1 6点 虫暮部
(2023/05/26 13:12登録)
 この作者は、秀逸なアイデアを示しつつも、ズバッと切れ味鋭いタイプではなく、寧ろややナマクラでデレッとした部分に味わいを感じさせる、と私は認識している。
 その作風が生きているのが「秋刀魚、苦いかしょっぱいか」「ペンローズの乙女」。
 一方、「六十五歳デス」の、世界設定。そこでは(偽薬効果と承知の上で)ああいう稼業が成立する、そこまではいい。しかし、施術のパフォーマンスがあまりにチャチ、あの程度で大金を稼げる、非合法である、しかも警察があそこまでしつこく追いかけて来る、となると疑問符が幾つも頭に浮かんで来たのだった。

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