| まだ出会っていないあなたへ |
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| 作家 | 柾木政宗 |
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| 出版日 | 2023年02月 |
| 平均点 | 6.67点 |
| 書評数 | 3人 |
| No.3 | 5点 | パメル | |
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(2025/12/04 13:31登録) 面接不合格者の自殺後、遺族から糾弾される人事部長の大地、小説家志望でブラック企業に派遣社員として勤める真一、SNSで「死にたい」と呟くコンビニ店員の梢、借金の取り立て先の子供に懐かれるヤクザの青葉。この一見、無関係な四人の人生が交錯する群像劇。 この四人には、いずれも誰にも知られたくないことを知られたり、標的にされるなど不本意なことが起きて人生の転機となる。誰かと出会ったことにより心情や立場に変化が生じる。この作品には派手な趣向はない。それぞれが、その人なりの生活をしている周辺で、生活に即したトラブルが発生し緊張状態を迎える。隠れていた相手の裏の顔、意識していなかった自分の本当の顔が浮き彫りになる。 「星々が無数に輝き、線を引くことで星座が生まれる」という比喩が物語全体を貫いている。これは「人との繋がりは偶然性がある」という抽象的なテーマを、詩的なイメージで暗示している。時間軸の操作や伏線の緻密な配置により、後半でそれぞれの繋がりが明らかになる仕掛けが驚きを生んでいる。 タイトルの「まだ出会っていないあなたへ」は、未知他者への手紙という意味以上に、物理的には出会えなくても、運命で繋がる人々を指している。この思想は、SNS時代の希薄な人間関係への批判と希望の両方に内包し、読後に静かな余韻を残す。 |
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| No.2 | 7点 | メルカトル | |
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(2023/05/15 22:35登録) 孤独で、後悔ばかりで、将来が見えない。周りが皆敵に見えてしまい、誰も信用できない。自助が声高に叫ばれ、助けを求めることができない。 ーーでもきっと、あなたを見つけてくれる人がいる。 1.経験者採用面接での不合格者が自殺をしてしまった人事課長。 2.デビューしたものの2作目が出ずブラック企業で働く小説家。 3.SNSで「死にたい」と呟き続けるコンビニ店員。 4.取り立て先の子どもに好かれてしまったヤクザ者。 Amazon内容紹介より。 プロローグでまずは惹き込まれました。きっと期待できる作品に違いないとの予感がしました。四つのそれぞれ毛色の違うストーリーは取り立てて物珍しいものではありません。何時か何処かで読んだような気がする物語ばかりです。そして文章も決して上手いとは思えません。しかし、それぞれの登場人物が悩み苦しみ、人間の弱さや脆さ危うさをこれでもかと描き出しています。その意味で、ある種の群像劇と言えるでしょう。どこにでもいる、ヒーローでもヒロインでもない等身大の一人の人間として、当たり前の生活でありながら当たり前ではない物語を紡いています。 私は途中何度も何故わざわざ長編にしたのだろうかと疑問に思いました。これなら短編集で良かったのではないかと。しかし、それが大いなる間違いだと気づくのがあまりに遅かったのです。 第四章でえー!?となり、前に遡って読み返すことになろうとは思ってもいませんでしたよ。するとやはり・・・これ以上はネタバレになりそうなので控えましょう。 メフィスト賞受賞作でデビューし、本サイトでも散々こき下ろされた作者ですが、私は書評の最後に「この人は将来大成するかもしれませんね。それだけの力量を持った人だと思いますよ。」と書きましたが、もしかしたら本作がそれに当たるのかもなんて勝手に思ったりしています。いや、更なる傑作を期待しても良いんじゃないですかね。 |
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| No.1 | 8点 | 人並由真 | |
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(2023/04/10 08:05登録) (ネタバレなし) それぞれの場で語られる、個々に切ない思いを宿した者たちの4つの物語。それは――。 ……どこかで、いやあちこちで、かつて見たような既視感もたしかに生じるのだが、その上で「とても良かった」と強い感慨を抱く、ヒューマンドラマミステリの優秀作。 6年前にデビュー作『NO推理、NO探偵?』を書いた作者がずいぶん遠いところに来てしまったなあ、と、ほぼリアルタイムで全作、付き合ってきた身としてはしみじみ。 で、単品での本作をホメること自体は、まったく、やぶさかではないものの、こっちの方向で実績を積んでいく(あるいは新規の読者に反響が広がる)と、作者のディフォルトの「アイとユウ」&「朝比奈うさぎ」の両シリーズがポロっと忘れられそうで、ソレだけがすこぶる心配(笑・汗)。双方のシリーズもまたそのうち、ぜひとも新作が読みたいもんです。 (つーか、作者が<新境地>に乗り出して、その反動でうっちゃられていった、かねてよりの新本格系の名探偵キャラクターって、存外に多いからなあ……。同じ轍を踏まないように、願いたいモンである。) |
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