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ミステリの祭典

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氷の致死量

作家 櫛木理宇
出版日2022年05月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 HORNET
(2024/04/30 22:28登録)
 私立中学に赴任した教師の鹿原十和子は、自分に似ていたという教師・戸川更紗が14年前、殺害された事件に興味をもつ。更紗は自分と同じ無性愛者ではと。一方、街では殺人鬼・八木沼武史が“ママ”を解体し、その臓物に抱かれていた。更紗に異常に執着する彼の次の獲物とは…殺人鬼に聖母と慕われた教師は、惨殺の運命を逃れられるのか?『死刑にいたる病』の著者が放つ、傑作シリアルキラー・サスペンス!(「BOOK」データベースより)

 序盤から描かれるシリアルキラー・八木沼武史のサイコっぷりと、性的マイノリティという社会問題を包摂した主人公側の物語とが、奇妙に融合して魅力的な一編になっていた。あまりに偶然の符合が多いというご都合主義はあるにせよ、OBが保護者、教員に多く集う名門校という設定を鑑みれば目をつむってもよいかな。ラストが近づくにつれ、うすうす真相は見えてきた感はあるものの、飽きのない展開でリーダビリティを維持する筆力は作者らしく、楽しく読み進めることができた。

No.2 5点 猫サーカス
(2024/01/15 17:21登録)
聖ヨアキム学院中等部に赴任した英語教師の鹿原十和子。彼女は着任早々、十四年前に学内で殺された戸川更紗という教師との類似を指摘される。十和子はその後、更紗とのもう一つの共通点の存在を疑う。彼女も自分と同じくアセクシャル、つまり無性愛者だったのではないかと。十和子は、学校でも家庭内でも問題を抱えつつ、未解決の更紗の死に関心を深める。本書は、そんな十和子の描写に並行させて、殺人鬼の八木沼の行動を読者に克明に示していく。十和子にのしかかる心理的圧迫と、八木沼による醜怪な猟奇殺人の連続が合流する刺激は強制無比。様々な家族像を示し、さらに終盤で十和子に対する犯人の意外な言動を示すことで、善悪や正常異常の判断基準を読者に問う。

No.1 5点 ぷちレコード
(2023/02/26 22:21登録)
アセクシャル(何者にも性的関心を持たない)の新任女性教師が、学園で起きた14年前の女性教師殺人事件の核心に迫る物語。
連続殺人鬼を絡ませて性、毒親、宗教など時代の精神をつくり上げるものを掘り起こしている。特にアセクシャルに焦点を合わせ、生と性の営みに関する見方を根底から覆して新鮮な印象を与える。
暴力的で殺伐としているが、どんでん返しが効果的に決まっている。かなりグロテスクな描写があるので、読者を選ぶ作品といえるでしょう。

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