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ミステリの祭典

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巫女島の殺人
呪殺島秘録シリーズ

作家 萩原麻里
出版日2021年12月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 6点 虫暮部
(2024/08/15 13:01登録)
 この人達、何の権限も無いのに余所の事情に土足で踏み込み過ぎ。島の人が怒るのも判る。語り手は無神経な自己陶酔キャラだ。
 祀りに焦点が集まった結果、殺人事件が添え物みたいに感じられる。
 “島の秘儀” とは、事実としてオカルティックな事象が起きているのか、プラシーボ効果的な心理現象なのか、解釈の余地が残る。

 以上の要素は必ずしもマイナスではなく “そういう話” として楽しめるのだが、“中央の権力がマイノリティを蹂躙している” ようにも見える。

No.2 4点 nukkam
(2023/03/24 07:58登録)
(ネタバレなしです) 赤江島を舞台にした「呪殺島の殺人」(2020年)で呪殺島が日本に複数あることが説明されていましたが、2021年発表の本書では別の呪殺島である千駒島が舞台になっています。呪術を信奉し、観光地でありながらよそ者を受け入れず、絶対的な絆のようなものが存在する島社会の描写に力が入っており、本格派推理小説ではあるのですがホラー小説要素の前に謎解きの面白さが減退してしまったように感じます。いかにも呪殺島秘録らしい作品ではありますが。

No.1 5点 人並由真
(2022/12/05 07:21登録)
(ネタバレなし)
「呪術島」こと赤江島の事件から帰還した幼馴染の女子大生・三嶋古陶里(ことり)と僕<秋津真白>は、民俗学の女性准教授・世志月伊読(よしつきいよみ)に呼び出された。実は世志月のもとに、瀬戸内海の小さな島「千駒島」からいわくありげな匿名の相談状が届いているという。奇妙な催事が行われるらしい千駒島が、赤江島同様、かの「呪殺島」ではないかとの疑念を胸に、一行は島へと向かうが。

 「呪殺島」シリーズ二冊目。
 それなりに楽しみにしていた二作目だが、読み進めるうちに、今回は前回以上に、雰囲気優先の昭和スリラー的B級パスラーだと改めて実感する。
 困ったのは一番のサプライズのネタが早々とミエミエなことで、これに気が付かないミステリファンはそうはいないだろ、とも思う。

 もうひとつの仕込み、島全体の真相の方はちょっと面白かったが、一方で21世紀に今さらこんな文芸設定を軸に勝負に来られてもなあ、という感じでもあった。そういう種類のもので、ソノ意味では微妙。
 
 もちろん2020年代に書かれる国産パズラーがみな新本格の範疇になければならないということは決してないのだが、ここまでその手のトリッキィさやテクニカルさを放棄し、一方であからさまなサプライズ(あ、形容矛盾だ・笑)とやや強引な世界観を売りにされると、悪い意味で作品全体が古めかしい。

 昭和から一部のタイプの作家によって綿々と書き継がれた、おどろおどろしさが真っ先にセールスポイントだった通俗スリラーパズラーの系譜、あの末裔と考えればいいか。

 6点……あげてもいいけど、読後感を言葉にすると、正に「まぁ楽しめた」だなあ。よって、今回はこの評点で。 

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