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ミステリの祭典

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ファイナルガール・サポート・グループ

作家 グレイディ・ヘンドリクス
出版日2022年11月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 ROM大臣
(2023/11/30 13:44登録)
八〇年代を中心に流行した殺人鬼映画群が、現実の事件を映画化しているというパラレルワールド的なメタ趣向。
「悪魔のいけにえ」や「13日の金曜日」など人気シリーズと、それに対するマニアの耽溺が人生を破壊された被害者の現実と重ね合わされることで、そこには暴力が蔓延し、連鎖していくアメリカ、ひいては現代社会の歪みが映し出されるのみならず、物語の中で無造作に消費される死へのアンチテーゼもまた一個の人間であるという問題意識も浮かび上がる。それは翻って現実の犯罪消費へと向けられるものである。

No.2 6点 YMY
(2023/10/31 22:54登録)
リネットは22年前の惨劇で生き残った「ファイナル・ガール」だった。他の同様な事件で生存者となった女性たちとともに、10年以上にわたってグループでセラピーを受けている。彼女たちが遭遇した事件と同じような惨劇が報じられたその日、その身に再び危機が襲い来る。リネットは逃走を続けながら、敵の正体を暴こうとする。
現実に起きた数々の大量殺人をもとにホラー映画のシリーズが作られ、実在の生存者が「ファイナル・ガール」として世に知られている、という設定の物語だ。惨劇の記憶ゆえに強い猜疑心の持ち主となったリネットの、精神に危うさを抱えながらもたくましく危機に立ち向かう姿は魅力にあふれている。ピンチと逆転が連続する、波乱に富んだ展開も忘れ難い。

No.1 6点 文生
(2022/11/17 18:25登録)
登場人物が次々と血祭りにあげられるなか、ただ一人生き残って殺人鬼を返り討ちにするホラー映画のヒロイン・”ファイナルガール”。そんな彼女たちがもし実在していたとしたら?という発想で書かれた一種のオマージュ作品です。
事件によるトラウマから数十年間PTSDに悩まされてきた彼女たちの前に再び殺人鬼が現れるという話なのですが、「13日の金曜日」「ハロウィン」「悪魔のいけにえ」「エルム街の悪夢」「スクリーム」といった具合に、ファイナルガールたちが過去に体験した事件はすべて有名ホラー映画がモデルであり、(タイトルは異なっているものの)現実と同じように映画化されているというメタ構造が楽しい。それらの作品の映画レビューが挿入されていたりと、小ネタも効いており、スラッシャー映画のファンなら大いに楽しめるのではないでしょうか。ただ、ミステリーとしては大きな驚きはなく、フェミニスト論と絡めて教義的なまとめ方をしている点もいま一つ。

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