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ミステリの祭典

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善意の殺人

作家 リチャード・ハル
出版日2006年07月
平均点5.25点
書評数4人

No.4 6点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2022/10/19 15:47登録)
犯人が逮捕された後の法的場面から始まるが、犯人の名が伏せられ、謎解きの興味を失わせないばかりか、法廷ミステリ、フーダニット、ブラック・ユーモアという風にスタイルを二転三転していく。
ジャンルの枠内には収まろうとしないところに、本格の未来を垣間見させてくれる。

No.3 5点 E-BANKER
(2020/10/13 22:42登録)
今のところ、邦訳されている作者の作品は本作のほか「伯母殺人事件」「他言は無用」の全三作。
普通は一番著名な「伯母殺人事件」から読むよなぁーって思いつつ、たまたま図書館に並んであった本作を手に取ってしまった。
1938年の発表。原題は”Excellent Intentions”

~嫌味な嫌われ者の富豪が、列車の中で、かぎ煙草に仕込まれていた毒で殺された。誰がどのタイミングで疑われずに、毒を仕込めたのか。数々の証言によって「被告」の前で明らかにされていく。果たして「被告」は真犯人なのか。ところが「被告」の名前は最後まで明かされない。関係者の中のひとりであるには間違いないのだが・・・。「伯母殺人事件」をも凌ぐ、奇才ならではの技巧に満ちた傑作~

紹介文を読むと、まるで「被告当て」がメインテーマの本格ミステリーのように見える。でも、前の書評者の方も触れられてるとおり、どうもそれは的外れのようだ。
確かに終盤まで「被告」の名前は隠されてるし、判明する「被告」の正体は関係者の中のひとり・・・ではある。
でも、そこにサプライズが仕掛けられているのかというと、特段そういうわけでもない。
うーん。中途半端。

前半は探偵役(真の探偵役は別にいるのだが)のフェンビー警部の、アリバイを中心とした丹念な捜査行が描かれる。容疑者がひとりひとり俎上に上げられては消えていく・・・そう、実にまだるっこしい展開。
まだるっこしいながらも、徐々に絞り込まれてきたか!という刹那、次の場面ではあっさりと「被告」の名前は読者の前に明らかにされてしまう。
「えっ!」「ここでバラすの!?」と思わずにはいられない。
ただ、作者は更なる仕掛けを用意している。ただし、これもどうもピンとこない。何となく狙いは分かるんだけど、どうも手ごたえがないというか、不完全燃焼とでも表現したい気持ち。

あと、邦題の「善意の殺人」の意味。最初は嫌われ者の富豪を殺すこと自体が「善意」なのかと思っていたけど、それほど短絡的な意味ではなかったんだね。なるほど。良く言えば「深い」のかもしれない。
でも、正直なところ、本来の面白さ(それがあるのなら)の半分も味わえてない気がする。
確かに不思議な感覚の作品だった。

No.2 5点 nukkam
(2015/03/17 21:13登録)
(ネタバレなしです) 1938年発表のミステリー第6作である本書は「被告の名前を伏せたまま裁判が進行する異色の本格派推理小説」のように紹介されていましたが、これはあまり鵜呑みにしない方がいいと思います。確かに冒頭でまさしくそういう状態の裁判シーンが描かれていますがこれはすぐに中断されます。「この被告は誰なんだろう?」という興味で物語を引っ張る展開ではありません。物語の半分近くは、時間をさかのぼってのフェンビー警部による捜査シーンの方に費やされています。ここはF・W・クロフツやヘンリー・ウェイドにもひけをとらない、重箱の隅をつつくような地道極まりない捜査シーンで、通常の犯人探しの範囲を越えるものではありません。手掛かりからの緻密な推理による犯人指摘が行われる一方でそれだけにとどまらず、どういう判決が下りるかを最後のクライマックスに持ってきて、さらにもやもや感を残す締めくくりにするという異色のプロットです。ハルらしいといえばハルらしいのですが、一般読者受けするかは微妙な気もします。miniさんの「得体の知れぬ作品」というご講評はまさにその通りだと思います。

No.1 5点 mini
(2008/11/08 12:42登録)
一作のみのイメージだけで語られてしまいがちな作家の一人
「伯母」しか知られていないが、ハルはもちろん倒叙専門作家ではないし、そもそも「伯母」自体が倒叙かどうかさえ微妙だ
と言ってハルがごく普通の本格かというとそれも微妙で、今読める三作を読んだ限りでは、変なものを書く得体の知れない作家という印象だ
「善意の殺人」はハルの最高傑作と言われているが、鳴り物入りで訳されたわりには、なんだか得体の知れぬ作品だなあというのが正直な感想
叙述ではなくて技巧を凝らしたという表現が適当だろうと思うが、あまり狙いが成功しているとも言い難い
個人的にはハルの邦訳三作の中では、「他言は無用」が一番面白かった気がする

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