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ミステリの祭典

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綺譚集

作家 津原泰水
出版日2004年08月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 SU
(2025/11/01 20:20登録)
神経を患う「私」が遭遇する、少女の交通事故死の顛末を記した「天使解体」、学校の怪談風の「夜のジャミラ」、殺された女の死後の意識と記憶を辿った「玄い森の底から」、公園で兎を飼っている老人たちと、彼らに愛犬を殺された青年の戦いを描いた「聖戦の記録」など15編が収録されている。
文体に対する美意識の高さ、物語が求める「声」を聞き分ける感度の良い耳、夜の静寂の中から幻想を拾い上げる繊細な感覚、口の端から漏れる笑いが似合う歪んだユーモラス。どの作品をとっても作者らしさが出ており、作者の魅力を知るに最適な一冊。

No.1 5点 虫暮部
(2022/10/26 11:44登録)
 “忌憚” には文字通り “いみ、はばかる” の意味がある。タイトルは「忌憚集」と言う洒落? と思った程で、ぶっちゃけ平山夢明みたいなグロテスクなホラー短編集。但し、あの人が奇怪な妄想を煮詰めて爆発させるアイデア先行型である(っぽい)のに対し、こちらは文体の魔術師、外殻である言葉サイドからアプローチしてイメージを囲い込み切り取る作風である(っぽい)。
 そして本書では、その言葉使いとしての才が勝ち過ぎて、内実とのバランスが崩れがちだ(それが全てマイナスだとは言わないが)。オチで上手くまとめない作風が短編だと一際目立つ。白眉は「夜のジャミラ」。

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