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ミステリの祭典

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白い衝動

作家 呉勝浩
出版日2017年01月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 8点 take5
(2025/12/03 18:54登録)
呉勝浩作では爆弾≪本作の評価。
エンタメ色薄め、社会派色強め。

臨床心理学、精神分析学から、
殺人の社会的捉え、その他諸々
綺麗事を一枚ずつ剥いでいくと
私達の認知の偏りや癖が如実に
表れてくる、その様が圧巻の作。
ミステリーは手段。描く手段で、
後半のフーダニットや、最後の
一行は大きなテーマのおまけ。
それでもこの作品に出会って、
よかったなあと満足しています。

No.2 6点 HORNET
(2023/09/18 20:53登録)
 スクールカウンセラー・奥貫千早が、「人を殺したい」という衝動をもつ少年の真摯な相談を受け止め、苦悩しながらも必死で対峙していく物語。
 単なる衝動の制御を論じるのではなく、「加害衝動をもつ人間を社会で包摂する」ことをめざす千早の理念と、「隔離」「排除」を是とする社会的風潮との葛藤が大きな作品テーマとして流れている。そういう社会的な読み物として魅力を感じられる作品である。
 後半、学園祭で起きたヤギ殺しの事件からミステリ要素も大きくなってきて、その真相も謎解きの形できちんと作られているが、全体としては上に書いたような「罪を犯す性質を内包している人間と、社会はどう向き合うべきか」を問う物語の色が勝っている。
 とはいえ、面白かった。

No.1 6点 ぷちレコード
(2022/10/14 23:00登録)
小中高一貫校でカウンセラーとして働く奥貫千早を視点人物に捉える。新年度早々、高校一年生の野津秋成がカウンセラー室の扉を叩く。「ぼくは、人を殺したみたい」。その告白は、思春期ゆえの自意識、あるいは精神疾患によるものなのか。千早は、秋成との対話を重ねていく。そんななか、連続一家監禁事件を起こし十五年の懲役を終えた入壱要が、千早の住む街に暮らしていることが分かる。
犯罪を犯してしまった人間、犯しつつある人間を、社会はどのように受け入れることができるのか。彼らの幸福を考えることには、どんな意味があるのか。千早の内部には、理想主義者と現実主義者が、この人にしかありえない仕方で火花を散らしている。
その視点にシンクロしながら読み進めていった先で、本格ミステリとしてのギアが一気に上がる。そして、物語の謎がすべて解き明かされた瞬間、人はなぜ、人と共に生きるのかという大きな問いが胸に飛び込んでくる。

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