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ミステリの祭典

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5A73

作家 詠坂雄二
出版日2022年07月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 小原庄助
(2024/07/03 11:50登録)
東京都内で起きた四件の自殺。死者たちが互いに知り合いだった様子はなく、自殺の手段も全部異なる。そんな四件に共通するのは、ある文字のタトゥシールが死体に貼られていたことのみ。その文字とは「暃」。JIS漢字としてコードを与えられながら、音も意味も不明。用例も全く見つからない「幽霊文字」だった。
山本警部と早川警部補のコンビは、国語学者の意見を聞きに行くなど風変わりな捜査で謎に迫るが、文字を読み方を模索するやり取りの積み重ねは、不条理でどこかしら空虚な雰囲気だ。
合理的に着地しないことは予想出来るが、本書が刊行されたこと自体を踏まえたメタな仕掛けも、前書きの時点ですでに発動している。取り憑かれるような奇妙な魅力を湛えた作品だ。

No.2 5点 メルカトル
(2024/04/14 22:04登録)
関連性不明の不審死の共通項は身体に残された「暃」の字。
それは、存在しないにも拘わらず、
パソコン等では表示されるJISコード「5A73」の文字、幽霊文字だった。
刑事たちが、事件の手掛かりを探る中、新たな死者が……。
この文字は一体何なんだ?
Amazon内容紹介より。

全体的に切れ味が鈍いと云うか、スッキリしない印象です。幽霊文字に関してああでもないこうでもないと検証していく過程はそれなりに面白いですが、土台読み方すら判らない文字に対してはっきりした解釈が出来ないのは当たり前の事で、どこまで行っても結論が出ないもどかしさにげんなりしてしまったのは、否定できません。結局「暃」という文字の起源はある種のエラーな訳で、そこから何かしらの意味を求めるのが無理というもの。しかし、それがテーマの一つには違いないので、何とか小説としての回答が欲しかったところですね。

特命を受けた二人の刑事にはあまり個性がなく、どちらがどちらでも良かった様な感じを受けました。幽霊文字と連続自殺の謎――着眼点は面白いのに、それを上手く料理出来なかった残念な作品と言わざるを得ません。そして暗躍する怪しげなヘッドホンの男、これも併せて最終章の『始末』に期待が掛かりますが結果はうーん、としか。
一種のメタミステリであり、結末で驚きたい読者向けでないのは確かですね。

No.1 5点 虫暮部
(2022/10/06 15:37登録)
 兎に角 “暃” と言うネタがツボに嵌まった。こういう発想大好き。ところが事件本体は次第に妙な方向へ逸れて、驚く程ではない真相に辿り着いてしまった。偶数章の各キャラクターは生々しく描けているのに、結局まとめとしては “ホラー的要素の適用は是か非か?” に終始しているようで勿体無い。“暃” で募った私の期待は何処に行けばいいのか。

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