図書室の死体 初版本図書館の事件簿 |
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作家 | マーティ・ウィンゲイト |
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出版日 | 2022年06月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 5点 | YMY | |
(2023/10/20 22:23登録) 主人公は、新米キュレーターとして図書室に就職した女性。探偵小説の素人ながら奮闘する彼女が、図書室で死体が発見され、皮肉なことに探偵小説的な謎解きに乗り出すことに。 クリスティー作品の二次創作サークルの面々をはじめとする癖の強い登場人物たちが印象深い。ミステリとしてはやや薄味だが、愉快な読後感を残す、丁寧に組み立てられた小説である。 |
No.2 | 5点 | nukkam | |
(2023/08/03 21:51登録) (ネタバレなしです) アメリカのマーティ・ウィンゲイト(1953年生まれ)は園芸本を書いていましたが2014年にミステリー作家としてデビュー、園芸小屋ミステリシリーズ、類は友を呼ぶミステリシリーズを発表した後に第3シリーズとして初版図書館の事件簿シリーズの第1作である本書を2019年に発表しました。ちなみにどのシリーズも舞台は英国です。私も人並由真さんと同じく読む前はちょっと期待していました。作中でアガサ・クリスティーの「書斎の死体」(英語原題は「The Body in the Library」)(1942年)が言及されていますが、本書の英語原題が「The Bodies in the Library」なのですから。そしてアマチュア探偵としては心もとなく、しかも最初は警察まかせの態度だったヘイリー・バークがアポなしで警察や容疑者を訪問しては強引な推理を披露したり強引な質問したりするようになったり、ミス・マープルならどうするだろうと考えたりと本格派推理小説を意識したところは確かにあります。しかし場当たり的捜査が何度も繰り返されるメリハリのないプロットに私はげんなりしてしまい、終盤にヘイリーが「何が起きたのかがわかった」と思ってもついに解決かとわくわくできませんでした。せめて「手がかりや証拠がひとつにまとまるさま」を明快に説明してくれればよかったのですけど。創元推理文庫版で450ページ近い作品ですがページ数以上に長さを感じてしまいました。 |
No.1 | 5点 | 人並由真 | |
(2022/08/29 22:34登録) (ネタバレなし) イギリスの一地方にある古都バース。ジェーン・オースティン研究家だが失業してしまった「わたし」こと40代の離婚女性ヘイリー・バークは、そこでミステリ作家兼初版本コレクターだった亡き老婦人ジョージアナ・ファワリングが創設した組織「初版本協会」の書籍キュレーター(鑑定士)の職に就く。協会には当然ながら無数のミステリの蔵書があり、周囲の面々もヘイリーにミステリ通であることを期待するが、実は当人はこれまでほとんどミステリなど読んだことはなかった……。協会の存続のために、ヘイリーたちは協会主催でクリスティー作品の二次創作の競作企画を考えるが、参集したアマチュア作家はそれぞれポンコツな面々ばかりだ。そしてそんななかで、殺人事件が発生する。 2019年の英国作品。「初版本図書館の事件簿」シリーズの第一弾。 オモシロそうな新刊なので手に取ったが、ミステリ的にはかなりゆるい内容で、いまだコージーというジャンルがよくわからない自分などは、これが(悪い意味で)そーゆーものか? という感じである。 (一応はフーダニットになっているが、謎解きは地味にチマチマ終わる感じであった。動機の真相は……ちょっとだけ、面白いかも?) でもって主人公のヒロインが立場上それじゃマズイのに、実はミステリをまったく知らずにそれをなるべく周囲に露見しないようにしてるという一番の? 売りの大設定。 作者的にはその辺のギャップで読者の笑いと親和感を求めようという意図なのだろうが、実際のところ、これでメシが食えるならサイコーじゃん、と言いたくなるような、ジェイムズ・グレイディの『コンドルの六日間』の主人公にも匹敵する最大級に恵まれた立場にあるにも関わらず、「(アラン・グラントとロデリック・アレンとどちらが名探偵と思いますか? という主旨の質問に対して)わからない。誰それ」とか「ミス・シルヴァーって誰?」とか、殴ってやろうか、このアマ、といった種類のイライラが募るばっか。前半はそーゆー、とんでもない妙なフラストレーションばっかが溜まっていく(笑)。 でもまあ途中からはさすがに、この主人公、少しずつクリスティー作品をつまみ食いで読み始め この世の中にこんな素晴らしい世界があったなんて、的にハマっていく。うんうん君も今日からは僕らの仲間。飛び出そう、青空の下へ。砂に書かれた青い三角形の第四辺定規。 ついでに言うと、クリスティー作品の二次創作志望のアマチュア作家連中も「ミス・マープルとゾンビを戦わせたい」だの「ポワロがESP能力で謎解きを」とか構想する、まるでクリスティー作品原典の基本軸を知悉も理解もしないで自分の好きなことだけ書こうとするクズばっかで、いや、その辺も当初はギャグとして受けとろうかと思った。 けれど、そのうちにすぐ、これって作者自身がクリスティー作品にまともな見識も愛情もないからこの程度のオチャラケでしかモノが言えない、アホななんちゃっての登場人物しか出せないんだよね? と気づくし。 要はその程度の作品。 まあボロクソに言った割には、主人公周辺の猥雑な人間関係そのほかで楽しめた面もあるので、評点はこのくらいで。あまり大きくは期待しないでお試しすることを、オススメします。 |